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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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風鳴り坂の怪 探偵奇談15

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神様のところに嫁入りするというのは、古来より人柱になることを意味する。人身御供だ。自然現象や疫病といった神の怒りを鎮めるために、その命を差し出すお役目。

部屋の中は静まり返っていて、妙に孤独感を刺激する。こんな静かな夜は、部屋の外の世界が存在せず、この世に自分がたった一人で生きているかのような感覚に陥るのだ。子どもの頃はそれが怖くてたまらない時期もあった。自分は所詮、天狗の意思を体現するためだけに生きているのだろう、そこにしか価値がないのだと、そう本気で思っていた時期が、颯馬にもあった。家族の誰にも、山と天狗の声は聴こえない。自分が生まれ持った使命が怖くてたまらない時期があった。

(諦めてしまったのだろうか。いや、違うな)

今はもう、それを悲しいとか虚しいとか思えない。諦めとは少し違う、もう少しポジティブな心の持ち方。何とかなるだろうし、何とでも出来る。自分の人生は自分の物だ。瑞に出会って、その奇妙な魂の在り方に触れ、そう思えるようになった。

運命に、神に、掟に、世界に、摂理に逆らい続け、やっと心の平穏を手に入れた瑞。思いの強さは奇跡を起こす。颯馬に奇跡は起こせない。だけど、心は自由だ。どんなときにも。

「寝よ」

明日のことは明日考えればいいし、未来のことはその未来が来たとき考えればいいのだ。楽観的な己の性格に感謝しつつ、颯馬は毛布に潜り込む。夜明けはまだ遠い。





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