風鳴り坂の怪 探偵奇談15
「でも、上がった先に出来た新道の大通りまでの近道になるから、また最近そこを利用する人が増えてるんだ」
「で、そこで怪奇現象?」
「そ。それが変質者騒動と関わりがあるらしいんだよね」
手伝えっていうんだろ、と瑞が言うと、へらへらと颯馬が笑った。別に手伝うこと自体は苦ではない。颯馬には世話になっているし、何よりもう他人じゃない。初めは何だか煩わしかったが、いまは友人だと思っているから。
「お願いできるかな」
「いいよ。俺が役に立てればいいんだけど」
「アリガト。明日の放課後、早速一緒に来てもらえるかな」
危ないことすんなよ、と話を聞いていた伊吹が声を尖らせる。
「ちょっと危ないことかも。だから先輩は連れていけない」
その言葉に、安請け合いしたかなと瑞は少し悔いた。颯馬が言うからには本当に危ないのだろう。
「でも、瑞くんがいれば多分ダイジョーブでしょ!」
「なんだよそれ…」
「じゃー明日またね!」
颯馬が帰っていくのを、瑞は伊吹とともに見送った。
「大丈夫なのか?」
不安そうな伊吹。
「頼むから、怪我とかそういうのはやめてくれよ」
「無茶はしません。とりあえずどんな様子か見てきます」
風鳴り坂というその美しい名前の坂で起きる怪奇現象とは、どのようなものなのだろうか。心配そうな伊吹をなだめながら、瑞は冬空の下を家路についたのだった。
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作品名:風鳴り坂の怪 探偵奇談15 作家名:ひなた眞白