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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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風鳴り坂の怪 探偵奇談15

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「人身御供って言うんだろ?前にテレビでやってたよ」
「うん、そうだね。女の子は人柱だった。そうやってみんなのために命を捧げたひとは、神様になるんだよ。神様になって、みんなを守ってくれる」

それってかわいそう、と誰かの声が漏れた。颯馬は優しい目で子ども達を見てから、続けた。

「…風鳴り坂に、その女の子のために建てられた小さな祠があったんだ。みんなを守ってくれてありがとう、あなたのことを忘れませんよって思いを込めて建てられた祠が。知ってる?」

知らない、と子ども達は首を振る。公民館の職員や、つきそいの大人たちも首を傾げている。

「やっぱ、その子かわいそう…」

後ろのほうに座っていた少女が言った。

「自分のおかげで平和になったのに、忘れられるなんて、かわいそうだよ」
「でも、みんなはいま知ったよね。それだけでいいんだよ」

颯馬の言葉に、それだけでいいの、と別の男子が尋ねる。

「祠だったら、お菓子やお花をお供えしなくていいの?」
「うん。あの坂に誰かのための祠がある。かつて、あった。それを知ってくれているだけで、いいんだ。それでときどき思い出してあげるだけでいいんだよ」

颯馬の言葉に、小学生たちがざわざわと会話を再開させた。

「あたし、お花お供えしてみる」
「坂の近く、春になったらいろんな花さくもんね」
「給食の残りのパンとかでもいいのか?」
「バーカおまえ、そんなんもらって嬉しいか?もっといいもんあるだろうが」
「水とかいるんじゃないの?」
「うちの使わなくなった湯呑茶碗持ってこようか」

小学生たちの優しい言葉に、瑞は呆気にとられる。颯馬がしたかったのは、こういうことだったのだろか。

「これで大丈夫。出よう」

颯馬と瑞は、子ども達に気づかれないようそっと退室した。公民館の外に出る。心地よい寒さに、暖房で火照った身体が冷めていく。