小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

風鳴り坂の怪 探偵奇談15

INDEX|29ページ/35ページ|

次のページ前のページ
 


「誰もが、誰かに支えられて生きてる。一人でも生きていけるってひともいるけど、それはゴーマンだよね。誰かの作ってくれた食べ物を口にして、自然が生み出してくれた空気を吸って、雨のもたらす水を飲んで生きてるでしょ?」

確かにそうだ。何かのおかげで、自分達は生きていられる。一人で生きていけるというのは傲慢な考え方なのだ。人間だったり、自然だったり、様々なモノのおかげで命は成り立つのだから。

「そういうときに心の中で、ありがとうって思えることが大切なんだ」

しん、と子ども達のざわめきが遠くなる。颯馬の話に、聞き入っている。声が決して大きくないのに、その言葉は聞いている者を引き込む。瑞も、引き込まれていく。

「ありがとうの気持ちを、忘れてるひとが多いんだ。君たちより、大人の方がそうなんだけどね。その気持ちを忘れて、どうしてああしてくれないんだ、どうしてうまくいかないんだ、俺の思い通りに動けよって、周りに腹ばっかり立てている」
「あたし、ママに、いつもありがとうって思ってるよ。ごはん作ってくれてありがとうって!」

一番前で颯馬を見上げていた少女が笑顔でそう言った。

「えらいね。そういうことを、忘れているひとが多いんだよ、本当に当たり前のことなのにね」

颯馬はそう言ってにっこり笑う。

「…みんなとそう年の違わない女の子が、命を犠牲にしてこの町を守ったことがあったんだよ。ずっとずっと昔のこと。昔の人は、どうにもならないことがあると、神様に縋ったんだ。今だって、みんなも神様にお祈りしたりすると思うけど、昔のお祈りの仕方は残酷な方法だった。大雨が続いたり、病気が流行ったり、雨が降らずに食べ物が作れなくなったり…そういうときに、神様に命を捧げて願いを叶えてもらってきたんだ。そうするしかなかった。人間は、弱いから」

人間は弱い。その通りだと、瑞は思う。
知ってるよ、と高学年らしい男子が手を挙げた。