小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

風鳴り坂の怪 探偵奇談15

INDEX|31ページ/35ページ|

次のページ前のページ
 


「おまえ教師になれるんじゃないか」
「やー無理無理」

そんなことを言って笑う颯馬だが、瑞は半ば本気で思っていた。子ども達に語り掛ける様子は、なんというのか、心を掴む技術を心得ているかのようだったから。
雪の上に、寒椿が鮮やかだ。落ちているその赤い花を幾つか拾い、颯馬が坂へ向かって歩いていく。

「日本中に、そういう神様がいるんだろうな…」

瑞の呟きに、颯馬が振り返る。

「信仰や力を失うことよりも…忘れられる方がつらいのかもな。神様でも」
「そうだね。沓薙の神様達にだって、それぞれに事情があるんだ。あんまり嫌わないであげてね、瑞くん」
「別に嫌ってるわけじゃない…」

天狗がおっかないってだけだ、と瑞は口を尖らせた。

「あの天狗様は…人間がお好きなんだよ。弱くてオロカな人間が、愛おしくてかわいそうで、なんとか正しく生きさせて幸福になってほしいって、そう願っている。それだけ。かわいいでしょ」

かわいいものか、と言いたかったが、その天狗に仕える颯馬にも、きっと様々な感情があるのだろうと思い、瑞は言葉を飲み込んだ。

風鳴り坂をのぼり、雑木林に分け入る。先ほどの叢に隠れていた苔むした石の前に、颯馬がさっき拾った寒椿の花を並べる。赤色が、雪の白によく映える。

「…上等な晴れ着を着て、最期のときを迎えたんだよ。あの真っ赤な着物。晴れ着は、おめでたいときに着るものなのにね」

颯馬はそのまま、しばらく祠の前から動かなかった。じっと。何かを考えているのか、それとも少女のために祈っているのか。その背中に、瑞は初めてこの同級生が背負っているものの重さを知った。神社の子、とこれまでことあるごとに揶揄してきたが、これが颯馬の本質。彼の、使命とも言えるのではないか。

(神様のために、心を配って奔走する…)

それが彼の仕事なのだ。神様の声を聞くことが出来る、颯馬にしか出来ない使命なのだ。