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物語を紡ぐ

老人に連れられてやってきたのは、朝霧町の公民館だった。ホールにござを敷き、二十名にも満たない小学生たちが、数名の大人と作業を行っている。節分の豆入れを作っています、と公民館の職員が説明してくれた。

（颯馬はこんなところで、何をしようって言うんだ…）

作業はもう終盤らしく、片付けや帰る準備をしている子もいる。少しだけ時間を下さい、と職員に伝える颯馬を見て、瑞は戸惑うしかない。老人も同じようで、職員からマイクを受け取った颯馬を怪訝そうに見守っている。

「ねー、ちょっといいかなー？」

颯馬がにこやかに呼びかけると、小学生たちが一斉にこちらを向いた。

「きみたちは、朝霧小学校の子たちだよね？」

そーだよー、と一年生らしき幼い少女が答える。

「お兄ちゃんのお話聴いてくれるかな？」

えー、と子ども達がはもる。

「えーもう帰りてーよー」
「テレビみたーい」

帰り支度を整えた子ども達がブーブー言うが、颯馬は意に介さない。にこやかな笑顔のままで続ける。

「まあまあ、すぐ終わるからさ」

そう言うと、颯馬は一息つくように沈黙する。黙って子ども達の顔を見渡し、優しく微笑んだ。

「――生きている中で、ああ今守ってもらったなって感じる場面って、ない？」

突然の質問に静まり返る子ども達。颯馬が何を言わんとしているか理解できないのだろう、しばらく沈黙が続いた。

「どう？」

ある、とか、ない、とか、ようやく声が飛び交う。