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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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風鳴り坂の怪 探偵奇談15

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どうやって、と尋ねたときには、颯馬は夜天を仰いでいた。

「大丈夫、ほら来たよ」

ギャアギャアと、何か鳴き声が近づいてくる。それはカラスだった。10匹はいるだろうか、坂をめがけて飛び降りてきたかと思うと、カラスたちは二つ首の犬や生首に飛びかかった。おぞましい鳴き声を上げ、犬は闇の中でのたうち回っている。

「カラス…?」
「この町のカラスの殆どは、うちの天狗様の眷属神だから。さあ、今のうちに行こう」

坂を下りきろうとしたとき、瑞の背中にぺたりと何かが張り付く気配があった。瑞はぎくりとして足を止める。おぎゃあ、と耳元で響く赤ん坊の声。

「やめてくれよ…!」

生ぬるい指先が、首の後ろからペトペトと頬に触れてくる。足元にも、うぞうぞと小さな手がまとわりついているのがわかる。おかあさん、おかあさん、おかあさん、おかあさん、おかあさん…声があたりを包み、耳を塞いでも赤子の鳴き声がやまない。

「はいドーン!」
「うわっ!」

突然頭から水をかけられて、瑞は飛び上がった。颯馬がやったのだ。

「何すんだよ!」
「え、お祓い。赤ちゃん、消えたでしょ」

ああ、そうか。神社の御神水だ。ペットボトルじゃなくて、水筒に入れてきたのを一気に瑞の頭からぶちまけたのだ。強烈な浄化作用があるという天狗池の水のおかげで、瑞を取り巻いていた気配は消え去った。