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茨城政府

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 WGIPの話は、篠崎にはあまりにも衝撃的で興味深く話に引き込まれていった。戦後日本の歴史だけでなく、現代社会にまで影響を与える奥の深い内容のように思え、もっとじっくり話すべき内容だったが、ここへ招かれた知事という立場もある。ずっと古川と話しこんでいる訳にもいかない彼は、改めて話を聴きたいと申し出た。
 古川が明日、笠間市にある旧日本海軍の筑波航空隊跡地の博物館を訪れると聞き、休暇の篠崎は案内を兼ねて話の続きを聴くことにした。
 
 関係者と挨拶を交わしながらタラップを降りた篠崎は、壮大な航空護衛艦『かが』をもう一度仰ぎ見て電飾を歪みなく反射する黒塗りの車に乗り込んだ。
 大型建設機械メーカーの工場が2社も隣接し、国内ではお目にかかれないような巨大なダンプカーやブルドーザーを輸出する港湾地区。林立する大型クレーンがひときわたくましく見え、その奥に『かが』の輪郭を電飾が浮かび上がらせている。港湾の夜景写真が流行した事があったが、なるほど、上手く撮れれば飽きない写真になるだろう。
 
 WGIP
 戦後日本を骨抜きにしてしまった占領政策。大人として戦争を経験した世代が殆ど残っていない今も日本を蝕み続けているように思えてならない。
 開戦から80年、日本はアメリカとどう戦えばよかったのだろうか?
−戦うも亡国、戦わざるも亡国。しかし戦わずして国亡びた場合は魂まで失った真の亡国である。−
 あの悲壮な言葉が木霊する。
 あの戦争を「太平洋戦争」という呼称は、戦後占領軍が名付けたもので、あの戦争を戦った人々は「大東亜戦争」と呼んでいたという。
−大東亜戦争−
 この名称ならば、欧米列強とアジアにとって日本はどうすればよかったのか。という視点が芽生えてくる。
 敗戦国とはいえ、国を挙げて戦い、国中が焦土と化して、兵士だけでなく老若男女の計り知れない民間人を犠牲にして戦った国が、滅ぶ寸前まで戦った戦争の名称の使用を禁じられ、全く意味の異なる名称を使うよう戦勝国に強要される。敗戦の民は、愛するものが命を賭けた戦いの名を叫ぶこともできないし、その意味を伝えることも許されないのだ。
 なぜ戦勝国は「大東亜戦争」言う言葉を日本の歴史に刻ませなかったのだろうか。そして、なぜ当時の日本は受け入れたのだろうか。戦争の呼称だけではない。東京裁判も平和憲法も。今を生きる我々は、次の世代にどんな日本を語れるのだろうか。

作品名:茨城政府 作家名:篠塚飛樹