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「透明人間」と「一日完結型人間」

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「民族性の違いだなんて言葉で許されるもんじゃないわ」
 と思っていた。
 しかし、そう感じているのはどうやら自分と少数の人間だけのようで、迷惑をかけられようが外人連中に対してあくまでも、
「民族性の違いなんだから仕方がない」
 と言っている。
 そんな日本人連中の態度を見ている限り、どう見ても他人事のようにしか見えず、
――私が他の人と関わりたくないと感じたことに間違いはないんだわ――
 と感じさせられるばかりだった。
 元々亜衣も、別に外国人が最初から嫌いだったわけではない。過去に自分のプライドを傷つけられるような出来事があったからで、それは子供の頃のことだった。
 子供の頃はむしろ外国人の子供がクラスにいると、自分から友達になるような少女だった。
 あれは、友達になった外国人から誕生日のパーティに招待された時のことだった。その友達の父親は外交官で、民族的には劣等民族に当たる国の外交官だった。
 それでも、外交官という高い地位にある人だけあって紳士的で、お母さんも彼女も、日本人に比べてもしっかりして見えていた。
 しかし、実際にパーティに呼ばれた人を見ていると、日本人の子供のマナーの悪さも目立っていたが、それよりも、同じ国からやってきている子供たちを見ていると、同じ人間かと思うほどの民族性の違いに驚かされた。
 その時にパーティに行った日本人の同級生たちは、大人になるにつれて、しっかりとしたマナーを身に着けていったのに対し、外国人の連中は、まったく変わっていなかった。
 高校生になった頃、亜衣はふとしたことで、その時の外国人連中が、自分のことを、まるで冷徹人間のようにウワサしているという話を人づてに聞かされた。その時、亜衣は自分のプライドを傷つけられた気がしたのと、さらには、人づてに聞かされたことで、自分の中で人と関わりたくないという思いが決定的になったのを感じた。
――やっぱり自分の感じていたことに間違いはなかった――
 と、人と関わりたくないと思っていたことに対して、自分の正当性が証明されたと思ったのだ。
 亜衣は、彼の話を聞きながら、その時のことを思い出していた。
――どこの世界も同じなんだ――
 と感じたが、
――彼が私と関係があると言っていたけど、この性格に関係があるのかしら?
 という思いがふと頭をよぎった。
 亜衣はそのことを聞きただそうかと思ったが、どのように切り出していいのか分からない。とりあえず、彼の話をすべて聞いてからでも遅くないと感じたのだ。
「あなたのいる世界は、私たちのこの世界よりも数段進んだ世界なんですね?」
 と亜衣がいうと、
「確かにそうかも知れません。でも、進んでいることがいいことなのか悪いことなのかはさっきの歴史が答えを出すという意味では終わってみなければ分かりません。ただ、このままいけば、この世界も私たちの世界と同じような運命を辿るのではないかと思うんです。僕にはその確率は限りなく高いと思っています」
「私もそれは感じます。あなたの話には説得力があるので、私が理解するよりも先に、当たり前のように聞こえてきて、ついつい理解しようという思いが疎かになってしまいそうで怖いんです」
「それは分かります。僕があなたの立場だったらそうでしょうね。何といっても、いきなり別の次元から来たと言われて、ビックリしないわけはないですからね。でも、亜衣さんは僕の話を分かっているように思えたんです。だから、こんな話、亜衣さんにしかできないって僕は思っています。そういう意味では、僕は亜衣さんと会えて本当によかったと思っているんですよ」
 その言葉を聞いて、亜衣は不思議に感じた。
「あれ? あなたは私を探して、私の前に現われてくれたんじゃないですか?」
「ええ、そうですよ。でも、会って話をしようと最初から思っていたわけではないんです。まずは亜衣さんがどんな人なのかを確かめて話をしようと思っていたんですが、会って話を聞くのを最初にする方がいいと思うようになったんです。だから、僕は予備知識としての亜衣さんのことはほとんど知りません。僕たちの世界からでも、亜衣さんの予備知識を自分の頭の中に植え込むことは、それほど難しいことではないんですよ。それほど科学は発展しています。何しろタイムマシンも、ロボットも存在している世界ですからね」
 そういって、彼は亜衣に自分が亜衣の何も知らないということを告白した。
「あなたは、最初から私のことをほとんど知らないということを告白しようと思っていたんですか?」
「ええ、それは思っていました。ただ、どのタイミングで話をしようか、自分でも迷っていたんです。やっぱり、言葉の合間に紛れ込ませるのが一番いいとは思っていましたが、それに亜衣さんが気付いてくれるかどうか、それが問題でした」
「まあ、私の方も、知らないでいいことは知りたくはないからですね。特に未来のこととなると、知ってしまってせっかくの自分を殺してしまうことになりますからね。過去のことにしても、下手に知られてしまい、本当の私を見誤らないとも限らないので、そういう意味でも過去のことを知られるのもいやですからね」
「でも、こうやってお話をしてくると、亜衣さんの性格が分かってくるようですね」
「どういう性格ですか?」
「正直、この世界ではどういう性格がいい性格なのかということは僕には分からないです。だから、失礼に当たるかも知れませんが、あくまでも僕の偏見になるかも知れませんが、それでもいいですか?」
「ええ、もちろんです。この世界にいても、私だって、どんな性格がいい性格なのかなんて分かりません。一般的に言われていることはあるとは思いますが、それだって、私には信憑性が感じられないんです」
「やっぱり、亜衣さんは他の人とは違っているんだっていう意識があるんですね。実は僕も似たところがあるので、その気持ちはよく分かるんです。僕の場合は世の中全体に嫌気が差しているというところがあるので、ついつい誰であろうと逆らってみたくなるんです。まるで子供でしょう?」
 と言いながら、彼はニッコリと笑った。その表情はいかにも子供であり、それでもあどけなさの中に新鮮さを感じた。
 自分の知らない世界からやってきたというだけで尊敬の念を抱いている亜衣には、新鮮さと尊敬が結びついている自分の感覚がいつもと少し違っているのを感じた。
――そういえば、最近では人を尊敬するなんて感覚、味わったことがなかったわ――
 子供の頃にはあったような気がする。同じクラスの友達に、尊敬できる人がいたからだ。その友達は、普段から誰とも接することはなく、亜衣が話しかけると素直に話を聞いてくれたり、助言などをしてくれるのだが、その様子には温かみは感じられず、冷静さしかなかった。
――尊敬できる人というのは、温かみよりも、冷静さに感じるものなんだわ――
 と亜衣は感じていた。
 小学生の頃というと、漫画ばかり見ていた。テレビで見るアニメではなく、単行本ばかりだった。
「動く映像は分かりやすいのだけど、何か面白みがないのよ」
 というと、その友達は、
「そうだね。私も単行本ばかり読んでいるけど、アニメはあまり見ないの」
「同じだね」