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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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春はまだ先 探偵奇談14

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試合独特の心地よい緊張感が漂っている。弓道場の周りには各学校の部員が忙しく行きかっている。一日の日程の確認や組み合わせの決定を行った主将会議を終え、伊吹はみんなのところへ戻るところだった。七尾第一の主将とも挨拶を交わした。意識すまいとしても、「このひとが」と心のどこかで引っ掛かってしまい、伊吹は己の弱さを改めて認識したのだった。
しかし宮川に言われたように、それさえも受け入れてしまえば前に進むだけだ。いい意味で開き直れているのかもしれない。


「あの、伊吹くん?」


弓道場の入り口で呼び止められ、伊吹は固まる。聞き覚えのある声。静かに振り返ると、そこにはジャージ姿の彼女がいた。

「久しぶりだね…元気?」

ああ、変わっていないな。伊吹はそう思うことで、何とか自分の気持ちを落ち着かせようと息を吸う。

「うん。そっちも元気そう」
「今日はよろしくね」
「うん、よろしく」
「…じゃあ、えっと、また試合でね」

そう言って彼女は走り去ってしまう。

「……」

びっくりした。声を掛けられるとは思っていなかった。何かを期待していたわけじゃないし、今だってしていないけど。元気そうでよかった。そんなことを思う伊吹の隣で、うちの副将は恐ろしく凶悪な顔をして彼女の方を見ている。

「なに?なんで挨拶すんの?無神経なの?何アピールなの?もう彼女じゃないよね?嫌がらせ?幸せの余裕アピール?やめていただきたい」

…おまえ人格変わってないか?
この副将は朝から機嫌が悪いというか、クールを装い闘志を燃やしているのだ。珍しく。

「…別に意味なんてないだろ。知り合いに会ったから挨拶しただけだよ」
「またそうやって庇うんだから先輩は!」
「別に庇っちゃいねえよ。あの子だって別に悪いことしたわけじゃないんだから、必要以上に敵視するなよ。集中を欠くぞ」

なんて言いながら、伊吹はものすごく動揺していた。

(変わってなかったなあ…)

大好きだった頃のままの彼女に、ときめいたと同時に苦しくなった。伊吹を好きだと言ってくれたのはもう過去のこと。彼女の中に、いまは伊吹はいないのだ。