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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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春はまだ先 探偵奇談14

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気持ちをのせて



集合場所の駅に到着すると、すでに一年生が数名集まり、緊張した表情を浮かべていた。郁もまた、同じように緊張と不安を抱えてそこに立っている。いよいよ交流戦の朝だ。弓を持つ手が、すでに汗ばんでいる。雪が降っているというのに。

「郁、眠れた?」
「寝たのか寝てないのか、よくわかんない…」
「あたしもー」

ただ、気持ちだけはかろうじて前を向いている。伊吹にもらった言葉を、今日まで何度も反芻してきた。

(失敗してもいい。今日まで頑張ってきたことを、一つでも手ごたえとして感じたい!)

やがて先輩や顧問らが到着し、部員らは電車に乗り込む。少し離れたところに瑞が立っている。背が高いから、他の乗客や部員より、頭ひとつ飛びぬけていた。人ごみの中でも、すぐに見つけられそうだな、と郁はそんなことを思う。

(須丸くんは、いつも通りだな…)

瑞の横顔は硬く、口は真一文字に結ばれている。どういう心持ちでいるのかはよくわからないが、緊張や焦りや不安といった感情は読み取れない。試合にも慣れているし、努力しているから自信もある。どんな状況においても、自分の気持ちをコントロールできるのかもしれない。

(あたしもそうなれるように頑張んなきゃ)

郁はそんなことを思うのだった。このときの瑞が、冷静どころかもやもやする感情を抱えて苛立っていることなど、知る由もない。




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