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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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春はまだ先 探偵奇談14

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「練習試合は勝敗じゃなくて経験を積むことが目的なんだ。監督も二年も、それを承知でこの編成にしたんだよ。葉山だって、一之瀬のいまの状況をちゃんと理解してるから、心配することない。まあ、あいつ言い方きついとこあるからな。でも悪気はないから気にしなくていい」

葉山はきつい言い方もするが、優しいやつなのだ。葉山は郁の早気のことや悩んでいることもすべて承知で、組むことを了承してくれた。「あの子頑張ってるから、少しでも自信持たせてやりたい」と葉山は言っていた。だから郁は、安心して先輩に甘えてほしいと伊吹は思う。

「一之瀬だけじゃない。試合経験の少ない一年はみんな不安だと思う。でも最初から不安じゃないなら、それは驕りだろ?一生懸命に真面目に取り組んできたから不安で当たり前なんだよ。その当たり前を少しずつ自信に変えていくためには、実戦を繰り返すことが大切なんだ。失敗すればいい。そのための練習試合だから。俺たちも先輩たちにそうやって支えてもらいながら来たんだ」

郁の目にみるみるうちに涙がたまっていく。

「俺ら二年だって、一年から学ぶことはあるんだぞ。一緒に試合に出るからには、俺も葉山」も、一之瀬の射から勉強するつもりだ。よろしくたのむよ」
「は、はい!」

郁は頭を下げた。

「主将と葉山先輩と組んだことで、何か一つでも勉強できるように頑張ります。よろしくお願いします!」
「うん。こちらこそ」

気を付けて帰れよ、とその背中を見送った。少しは元気が出たならいいのだけれど。

弓道は、己の心と向き合うもの。弱い自分から目を逸らすことはできない。だけど、心と向き合う中で、弱さを克服できる自分の強さも見出すことが出来る。どうか郁が、暗闇から抜け出すきっかけとなるようにと伊吹は願った。



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