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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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春はまだ先 探偵奇談14

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今日の稽古は気合が入っていた。どの部員も、交流戦に向けて自分なりの目標を持って的前に立っている。いい傾向だと伊吹は思う。どの部員にとっても、プラスの機会にしてやりたい。

「一之瀬か?お疲れ」

当番に戸締りを任せて弓道場を出ると、雪の中にぽつんと郁が立っていた。

「あ、主将。少し、いいですか?」

どうやら伊吹のことを待っていたようだ。切羽詰まったような表情を見て、伊吹は彼女が何を話そうとしているのか想像がついた。今日発表されたチームでの練習は辞退し、彼女は今日も巻き藁で、自分の射形をひたすらなぞる練習を繰り返していた。

(不安なんだろうな)

チームの足を引っ張るかもしれない。それ以上に、今回の試合でこれまでの頑張りの成果が得られなかったら…。その気持ちが、射形を崩し集中を奪う。もう、そんな思いはさせたくない。こいつはずっと苦しんできたんだ。

「主将、あの、試合のことなんですけど」
「うん」

自分が団体戦に復帰するのは、チームの足を引っ張る結果にならないだろうか。早気は、完全に克服されたわけではない。しかも主将のチームだなんて。そんなことを、郁は震える声で伝えるのだった。
本当なら、主将の伊吹はレギュラーチームの柱だ。そこに郁を組みこむというのは、試合で郁の状態が通用するのかという実験的な意味合いが強い。それが目的で組まれているのだから、勝ち負けや伊吹の立場に配慮する必要などない。伊吹はそれをどうにか伝えてやりたくて、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「チーム編成が重圧になっているのならそれは申し訳ないけど。こちらの意図としては、迷惑かけてもらって大歓迎って意味なんだ」
「でも…」