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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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春はまだ先 探偵奇談14

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「なにしてんの!」

ひい、と郁は飛び跳ねた。追いかけてきて様子を見守っていた隣の伊吹も、「うおぅ!」とびっくりして飛び跳ねたのが見える。

「だだ、だって、声、かけてきたんだもん…」
「無防備だからでしょうが!警戒しなさい!」
「おいおいパパかよ須丸」
「だいたいおまえがついていながら!」
「いやあ、頃合いを見てあたしが撃退しようと思ってたんだけどね~」

冷静な美波と、ものすごく怒っている瑞とを、郁は交互に見ながらアタフタするしかない。

「じゃ、あたしとーるくんと約束あるから行くね」
「え!?」

美波が突然そんなことを言うので、郁は飛び上がる。

「須丸、一之瀬のこと頼むぞ。じゃ」
「ええ!?」

伊吹まで!戸惑う郁を置いて、二人はさっさと行ってしまうのだった。

「帰るぞ」
「待って、須丸くんち逆方向だよ。あたし一人で帰れるから」
「また変な男に捕まったらどうすんの?自分で追い払えるの?逃げられるの?」
「ひい!」

冷たい視線で人睨みされ、郁はもう黙るしかなかった。まだ怒っているらしい背中について歩く。
大きい背中を見ながら歩く。イルミネーションの施された遊歩道の光の下で、郁はまたふいに泣きそうになってしまう。さっきは美波がいたとはいえ、本当に怖かったのだ。

(背中見ると、なんかほっとする…)

大きな背中に飛びついてしましたい衝動に駆られる。抱きしめられたときの感覚が蘇った。あのときの、言葉にならない心地よさとを思い出すと、身体がほかほかと温まるような気さえしてくる。信号待ちで、瑞が立ち止まる。その背に、恐る恐る手を伸ばしてみた。こっち向かないで、あっち向いてて。