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アテルマ国の真実

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 六角国の支配の中、元々のカメリス民族の血に、六角国の血が混ざったのふぁ。
 つまりは、
「犬猿の仲である六角民族とカメリス民族の血が、大戦時代から半世紀経ったところで混じりあってしまった」
 血の混じり合いなど、迷信にすぎないと思っていたのは、アテルマ側のカメリス民族だった。
 しかし、
「本来のカメリス民族ほど、血の混じりを気にする民族もないのではないか?」
 と考えられていた。
 何しろ、まわりを海で囲まれた島国で、閉鎖的な面と閉塞感を一番感じている民族がカメリス民族だということである。
 元来、まわりを海で囲まれた島国が、先進国の仲間にいるのは、ごく限られた国だけである。他の国では考えられない都市伝説的な発想が生まれてくるのも、仕方がないというものだ。
 アテルマ国では、内乱が収拾し、独立国家としての体裁が整ってくると、軍隊も整備され、法律も確固たるものに形成されていった。
 元々、法律がなかったわけではないが、六角国からの強制的な法律の押し付けであった。そんな状態で、法律に沿った国家運営が行われるわけもなく、法律は、そのまま六角国の介入のせいで、有名無実となっていた。
 しかし、独立国家になると、六角国の法律とはまったく違ったものを作ろうという考えが芽生えてきた。かといって、いまさらカメリスの法律を参考にすることはできない。何しろカメリスには憲法第九条があり、曲がりなりにも「平和主義」としての立憲主義国家になっていたのだ。
 しかし、明治カメリスが歩んできた立憲君主型の国家を目指そうとは思わない。アテルマ国には、天皇や皇帝のような絶対的な君主がいるわけではない。あくまでも民主国家を目指すしかない。昭和カメリスの民主化は、敗戦国として戦勝国によって作られたもの。やはりカメリスを手本にするわけにはいかない。
 アテルマ国独自の国家建設を行う必要がある。それには、他国の歴史を知り、時間をかける必要がある。独立国家アテルマの未来には、時間が掛かることは分かっていた。
 まわりの国は、周辺国の影響を受け、目まぐるしく体制が変わっていった。クーデターや内乱が後を絶たなかったが、軍隊を持っているとはいえ、戦争慣れしていない軍隊ではすぐに鎮圧された。アテルマ国が内乱を起こした時は、軍隊があるわけではなかったのに、鎮圧にはかなりの時間が掛かった。そこには軍隊としての組織力でなくとも、同じ志を持った武力の方が、どれほど強力で、粘り強いのかということを思い知らされた。いわゆる「国家義勇軍」とでもいうべきであろうか。
 アテルマ国は、まわりの国の影響を受けることなく、内乱を横目に見ながら、自主国家建設へと土台を固めていた。列強としても、アテルマ国の独立の成功を今後の独立の見本として示したいという考えを持っていた。
 国際的に、何としてでもアテルマ国の建国を成功させなければならないという考えを持っていたのだ。
 タイミングという意味でも、アテルマ国の独立は、ちょうどよかった。表向きは独立国家として世界地図を形作っている国は、意外と多い。属国という形のもの、植民地として運営を母国に任されているもの、傀儡国家として、表向きだけの政府が治めているように見える国。アテルマ国は、六角国の都合によって、微妙に違う三つの体制を、それぞれの時期に形作られていた。
 国連や近隣諸国の緊張は、しばらく続いていた。そういう意味での「独立宣言」を、アテルマ国は今までに何度経験してきていることだろう。
 しかし、今回は完全な独立を目指し、国連の力を借りるつもりだった。六角国も、自国の事情と、社会情勢から考えて、どのようにしてアテルマ国を独立させればいいのか、考えていた。
 アテルマ国とカメリスとの完全な違いは、カメリスという国が周囲を海で囲まれた島国であるのとは違い、周囲を陸続きで国境を敷かれているということだった。それだけ脅威は深いものがあり、国家全体を大きな要塞にして、国境警備を中心に、まわりの国に注意を払っていなければいけない状況だったのだ。
 国境警備隊は元々あったが、故郷を守るための装備は薄目だった。ただ、要塞としての整備は整っていて、もし、陸軍が攻めてきた時の体制は整っていた。
 アテルマ国がもし他国から攻められれば、その報復は六角国が担っているということは、隣接国はは知っていた。
「アテルマ国ごときを攻撃し、六角国から報復されたのではかなわない」
 という思いが他の国にはあった。
 そういう意味での隣接国との緊張は、ずっと存在しなかったのである。
 アテルマ国が、なかなか六角国の属国として国連に感じさせなかったのは、国民のほとんどがカメリス民族であるということだった。
 元々六角国も、一時期カメリス国の植民地だった。
 いや、カメリス国だけではなく、列強から国土を食い荒らされて、ほとんど独立国家として体裁を保っていなかった。
 そのため、六角国は一時期、多国籍民族がひしめいていて、元々の六角民族は、支配階級に置かれていたのだ。
 しかし、世界大戦が終了し、新たな世界秩序建設の中で、一旦多国籍にむしばまれていた国家の回復を、六角民族は果たした。
 その後、世界各国で起こった独立運動の火付け役になったと言ってもいいだろう。
 六角国の独立は、その後に起こった他の国の独立運動とは違い、戦争によってもたらされたものではない。戦勝国による、
「軍事裁判」
 によって行われたことだ。
 新しい国家秩序の先駆けとして、六角国の独立は国際裁判によって実現した。ある意味で、
「軍事行動によらない唯一の平和的な独立」
 として、脚光を浴びた。そういう意味でも、その後、独立運動が過激化したのも当たり前のことだったのだ。
 六角国の独立が、もし軍事的に行われていれば、またしても大きな戦争が巻き起こり、世界多選が勃発しないとも限らない一触即発になっただろう。今度多くな戦争が起これば、それまでの戦争と違い、核保有国が存在していることで、一歩間違えば、核戦争により、世界のほとんどの地区で人が住むことのできない、最悪のシナリオが展開されたに違いない。
「そんな世界にしてはいけない」
 ということで、交連が結成され、その目的を、
「確固たる世界秩序の確立」
 と定め、国際紛争を解決するための機関として、どの国に偏ることのない中立的な機関として存在しているのだ。
 当時の大国と言われる数か国によって形成され、運営されていく。国連は、形成している国の法律に左右されることのない共通の理念を持っていて、
「憲章」
 という法律を持っていて、いくら主要大国とはいえ、国連憲章に逆らうことは許されなかった。
 それだけ、一か国の主張だけでは動かすことのできない憲章によって守られた国連は、ある意味、
「融通の利かないガチガチの存在」
 でもあったのだ。
 それでも、一番中立的な存在である国連の承認も、裁判によって得られた独立だったので、各国とも、満場一致で独立が承認された。その後に独立した国のほとんどが、独立のためのクーデターであったり、内乱であったりと、
「血を流すことによって得られた独立」
 であったことを思えば、六角国の独立は、
「奇跡の独立」
作品名:アテルマ国の真実 作家名:森本晃次