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アテルマ国の真実

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 今もそれは変わっていないが、経済問題などの諸問題で、国の存亡を考えると、今までのような睨み合いを続けていくことができなくなった。そして、世界は次第に社会主義陣営の革新が行われ、革命や内乱の時代が訪れた。
 内乱は次第に終結していき、革命政府が樹立されると、二大超大国である国の支配の元に、民衆による選挙で選ばれた首相や大統領によって、国家が成り立っていくようになったのだ。
 ある意味、世界から帝国主義はなくなり、民主国家の成立で、世界の地図は大きく塗り替えられたのだった。
 六角国は、両面の顔を持っていた。人間でいえば、
「二重人格」
 というものであろうか。
 柔らかい面と硬い面を持っていて、柔らかい面は、大国に対して、
「自分たちの国力はすでにかつてのようなことはない。したがって、逆らうこともないので、他の国との共存共栄をスローガンとして、新たな国に生まれ変わった」
 というような趣旨を、先進国首脳会議で宣言した。
 先進国としてすでにその数年前から加盟することができると、六角国は絶えず下手に出て、最初から融和路線を敷いていた。
 しかし、これも国際政治の専門家から見れば、怪しいものに見えた。
「あの誇り高い国が、いくら先進国の仲間入りという事態になったとして、そんなに簡単に、他の国に対して『右ならえ』などできるであろうか?」
 という危惧を持っていた。
 だが、専門家はそれを口にすることができなかった。
 六角国が他の国に『なびいた』時、六角国は自国のスパイを他の先進国に送り込んでいた。下手に六角国の作戦に対しての疑いを持とうものなら、暗殺の対象にされてしまう。それだけ今回の六角国の目論見は、真剣そのものだった。
 学者や専門家は、そこまで分かっていたので、敢えて警鐘を鳴らすことはしなかった。もし六角国に対しての危惧を政治家一人が叫ぶのであれば、六角国もうかつなことはできない。
 政治家というのは表に出ているもので、暗殺を試みるなら、その意図と犯人の目星はすぐについてしまう。それでは困るのだ。
 しかも、政治家というのは、自分たちの利益のために動くことが多い。もし警鐘を鳴らしたとしても、そのことを信じる人はそこまでいないだろう。特に、政党間での言い争いのネタとして用意していたものだとして、国民は考えるかも知れない。そんな曖昧な情報のために、わざわざ暗殺など試みるのは、国家としてはいささかお粗末なことではないだろうか。
 六角国の考えた通りの建国が行われ、国家運営も六角国が考えていた以上に、問題なく推移していた。傀儡政府が樹立されたが、そのうちに国民投票による国家元首が決められ、次第に独立国としての歩みを進むことになった。やっと国家が世界の仲間入りをした記念すべき時代を迎えることになった。
 ただ、六角国は次第に、四か国から距離を取るようになっていた。最初は、自由主義国家と距離を置くようになり、最後には、属国から距離を置いていた。その理由は、属国が六角国の最初に描いた青写真と少し変わってきたからだった。
 確かに、この国を属国として支配することが、六角国の最初からの目的だった。そして、この国から取れる資源を、できるだけ六角国の利益のために使うということが最大の目的だったはずだ。
 しかし、思っていたよりも、この国には資源が存在していたわけではなかった。確かに最初は資源が豊富で、使いたい放題に見えたのだが、表に見えている部分から、実際の捕獲量を計算していたのだが、実際に使用してみると、その見積もりが甘かったことに気づかされた。専門家の面目も丸つぶれだった。
 さらに、発掘された資源であるが、六角国にとって、兵器として使用した場合、想像以上に純度が低かったのだ。例えば、産出された一定の量から作られる爆弾や火薬は、想像していたよりも半分近くしか採取することができない。そんな状態で、属国として支配していくには、国家運営というのも、存外にお金と労力がかかるというもの。せっかく手に入れた資源庫であったが、国家運営を考えると、割が合わない計算になるのだ。それを思うと、六角国は志半ばで属国支配の手を緩め、属国としてよりも、他の国のように、国交だけでやっていく道を模索し始めたのだ。
 属国の方は、自由を得られたのだが、その代わり、自分たちだけで国家を運営しなくてはならなくなった。六角国の指導者は続々帰国していき、国家として孤立してしまう道が待っているとしか思えなかった。
 そうなると、ここから先はお決まりだった。
 国内の統治は乱れ、内乱が起こり、無法地帯が生まれてきた。そこに国連が介入し、騒動は収まったが、今度は国連が政治に介入してくることになる。
 国連の統治は、六角国のそれとはまったく違っていた。一長一短はあったが、マイナス面も否めない。
 国連は、まさかここが元々六角国の属国であったことに気づいていない。六角国が撤退していった時、元々属国であったという証拠を、実に鮮やかに消し去っていったのだ。
 もちろん、それは六角国だからできたこと、今までの歴史の中で、同じことをかつて何度も繰り返してきた。そのつど、証拠を抹殺することのマニュアルは出来上がっていて、今回もそれが使用されただけにすぎなかったのだ。
 そんなことは国民も国連も知らない。知っているとすれば、六角国のライバルであるもう一つの超大国だけだろう。
 彼らも知っているとしても、それを国連で問題にすることはない。せっかく紛争がなくなりかけている世界をまたしても、紛争の渦に巻き込むことはないのだ。元の属国に対しての対応は、
「一独立国の内乱」
 として片づけることに終始した。幸いなことに、六角国の関与に関しては、自分たちで証拠になるものは何も残していないだろう。
 そこまで分かっているのは、さすがに超大国というべきか。
 国家の体制こそ違っているが、どちらも超大国として世界に君臨してきたことは同じである。そういう意味で、両国とも考え方が似ているところがあり、
――相手がどう考えるか――
 ということを探っていけば、おのずと見えてくるというものである。
 属国としての国が、今や独立国になっている。内乱は国連軍によってあっという間に鎮圧された。ここまで戦力に差があれば、いくらなんでも、これ以上内乱を起こすことはないだろう。反乱軍もさすがに国連軍の前にひれ伏すことになったのだ。
 独立国の名は、アテルマ国という。
 アテルマ国は、独立を勝ち取った国ではなく、属国として、同じ建国となった他の三国とは明らかに違っていた。他の国からは同じような位置として見られていたが、それはあくまでも国家間としてのこと、民衆は次第にアテルマ国が傀儡国家であることを知るようになった。
「今の時代に、傀儡国家など……」
 かつての帝国主義時代であれば、それも分からなくはない。しかし、世界秩序が大きく塗り替えられ、世界から帝国主義が崩壊していった。時代は自由主義と社会主義に分けられ、独立運動などの動乱の時代を経て、次第に社会主義国家もなくなっていった。
作品名:アテルマ国の真実 作家名:森本晃次