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アテルマ国の真実

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 と諭された。その裏に老教授がいたことは言うまでもない。
 研究室に戻った真田だったが、今度は今まで父親の敵の政党のいうことを聞かなければいけないことに憤りを感じていた。しかし、後で父親から、
「これも作戦のうち」
 と、胸の内を聞かされて、
「そういうことでしたら」
 と、納得して大学に戻った。今度の研究はハッキリとしたものだった。まずは、法律が先行してしまったが、どうして女性だけがダメなのか、その理由の発見と、その対策に対しての研究が急務だった。
「数か月で終わるかも知れないが、一生の仕事になるかも知れない」
 と、まわりからも声を掛けられ、改めて自分の役目の重大さに震えが止まらない真田助教授であった。
 大学内でも、生理学研究室というのは、完全に隔離されたところだった。
 以前は、大学での一番秘密裏にされた場所はIT関係の研究室で、セキュリティを完璧にし、さらにネットでのロックも完璧にしていた。目的は国家の財政問題解決のための新しい産業としての企業を守るためのものであった。
 どちらも重要なのは否めないが、今回は法律はすでに制定されている。放ってはおけない事由で、国家存亡に大学も全面協力しなければいけなかった。
 しかも、この法律を制定しなければいけない発見をしたのも、この研究室である。理由が分からないまま、漠然とこのままでは国家の存続が危ういという結論に達した。国民の誰もが信じないだろうが、国家が全面的に信頼期間の発表なのだ。間違いであっても仕方がない。間違いでなかった時のリスクを考えると、法律の事前制定は仕方のないことだった。
「元々憲法を作る時に、他の国の人と結婚してはいけないなどという中途半端な制定をしたことで、今回のような事態に陥ったのかも知れない」
 そういう噂が立っていた。
 半分は当たっているだろう。
「ウソから出た誠」
 ということわざがあるが、まさにその通りなのかも知れない。
 元々、アテルマ民族の元祖であるアメリス民族は、加持祈祷は昔から行われていて、他の国からは考えられないようなお告げを受けることで、何度も国家の存亡の危機を免れてきたと聞いている。
 今の時代にはなかなかそぐわないようだが、アメリス国に行けば、神社、お寺、教会と、どの宗教であっても受け入れる態勢ができているのも、加持祈祷の類が昔から重用されてきた証拠である。
 真田助教授は、ある程度の予想を持って、調査していた。
 最初にまず、自分の予想したところから責めてみる。もし、その予想が当たっていれば、それほど時間を要することなく、この研究を終わらせることができ、地位と名声を手に入れた上で、改めて新たな研究に着手することができる。一番最高の展開だった。
 しかし、その目論見が外れた場合は、もう一度最初からになる。まったく予想しないところから始めるのだから、時間はいくらあっても足りないだろう。そうなってしまうと、今度こそ発見するまでには神頼みも否めない。そんな状態になってしまうと、学者もお手上げに近かった。
 もちろん、政府としても、そのことは分かっていた。いつまでに発見しなければいけないのか、ある程度のタイムリミットは計算していたが研究者にそれを言ってしまうと、プレッシャーで、元も子もなくなってしまう。黙って見守っていくしか、国としてはどうしようもなかった。
 それこそ、無言のプレッシャーだったが、研究を始めて半年もすると、原因の一端が見えてきた。
 発見のきっかけは、ふとしたことからだった。
――何だ、こんなことだったのか。ひょっとすると、俺以上に一般の人の方が先に気が付いていたかも知れないな――
 と感じたほどだ。
 昨年、真田助教授の親戚の家で、出産というイベントがあった。
 その家族の出産は、これで六度目。いわゆる子だくさんの家庭だった。
 その時、生まれてきた子供を見たお母さんは、
「皆、お父さんの性格によく似ているの。決して私に似た子供は一人もいないのよ」
 と言ったことがきっかけだった。
 法律を制定した過程において、どうして女性だけが他民族と結婚してはいけないという二様を重要視したのかというと、アテルマ国の秘密調査員の人が、六角国に入り込み、我が国の国防のためにその動向を探っている時、
「元々の、他民族との結婚を禁じた法律を制定した理由に、六角国が大いに携わっていることを発見した」
 と書かれていた。さらに、その続きとして、
「彼らは、結婚して血がまじりあったことによって生まれた子供が、いずれは国家転覆に携わるような運命を背負っていることを画策している。そのために、六角国の男をアテルマ国に潜入させているんだ」
 と綴られている。
 そこで終わっていたのだが、六角国の科学力は侮れない。しかも、遺伝子学にアテルマ国の研究の何百年も先を進んでいると言われるほど、
「遺伝子学先進国」
 の最有力国であった。
 しかも、この諜報員は、帰国できなかった。六角国でその手紙を最後に姿を消した。そして、
「早く、女性だけを他の国の男性と結婚できないように法律を組む必要がある。なぜなら、国民にも、他の国の男性と血が混じってしまうといけないのだということを認識させないと、取り返しのつかないことになる」
 と書かれていたのだ。
 六角国が我が国に対して、何かを画策していることは分かっていた。それが何であるかを探っている諜報員が行方不明になって、その前に警告を発しているのを考えると、一刻も早く法律の制定が急務だったのだ。
 六角民族は、アテルマ民族と見た目はあまり変わりはない。
「私は、アテルマ民族だ」
 と言ってしまえば、もし、偽造国籍さえ持っていれば、いくらでも言い逃れができる。
 実際に、今回の法律が制定された時、一緒に、偽造国籍についても法律化された。それまでは法律がないものだから、裏で偽造国籍を作成し、何とかごまかすことのできるようなことが組織ぐるみで行われていた。
 それが、裏の世界で暗躍する組織の資金源になっていた。
 国家もそこまでは分かっていたが、ある意味で黙認していた経緯があった。
「麻薬密輸や武器密造などのような国家転覆にかかわることに比べれば、かわいいものだ」
 と思っていたからだ。
 しかし、今度はそうはいかない。偽造国籍によって、他民族との結婚がまかり通るというのは許されない。
 今までの中途半端な法律は、いくら憲法とは言え、改正論の一番手にいつも挙げられていた。そんな法律と、国家転覆を秤にかければ、どちらが重要かは目に見えていた。それが今度の法律改正にどのような影響を与えるか、真っ先に政府が危惧したのが、この問題だった。六角国に諜報員を潜り込ませたのも、当然と言えるだろう。
 六角民族とアテルマ民族とが、見た目で判断できないというのは、アテルマ国が、今後深刻な運命に足を踏み入れていくことの前兆であるように思えてならなかったのだ。
 そんな時、六角国支配の中で、鎖国時代がしばらく続いたが、その時は、六角国とアテルマ民族とだけは結婚が許された。
 結婚に規制などなかったので、鎖国をしていたのだから、それは至極当然のことであった。
作品名:アテルマ国の真実 作家名:森本晃次