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アテルマ国の真実

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 さらに、隣国との外交もうまく推移し、四各国の独立もうまく穏やかに進んだ。その中に六角国の思惑も含まれていたのだが、他の国は知る由もなかっただろう。
 何しろ、他の国は、自国の体制や、新しい世界秩序の構築という目の前の大きな問題に対峙しなければいけなかったからだ。
 そういう意味では六角国は大国であったが、主義主張が他の先進国と違ったことで、あまり表に出されることはなかった。本来なら中心からはじき出されたことを不満に思ってもいいのだろうが、そんな素振りは出さなかった。他の国もそのことに疑問を感じることもなく、世界秩序の構築は問題が起こることもなく、順調に推移したのだった
 四か国とも、それぞれに首長国を持っていたので、首長国の法律を元にして、国家が運営されてきた。しかし、アテルマ国は六角国の属国であるにも関わらず、法律は六角国の法律とは少し違っていた。
 どちらかというと、民主国寄りの法律であり、法律だけを見ると、六角国の属国だということを忘れてしまうほどだった。しかし、それには理由があった。
 六角国はアテルマ国を属国にした理由は、資源が取れることであり、採取された資源を完全に独占していた。逆に資源がなくなると、六角国にとってアテルマ国は、
「いらない存在」
 となってしまうのだった。
 アテルマ国の法律が、完全に六角国と同じではないのは、アテルマ国が必要なくなった時のための対策であった。もし、まったく同じにしてしまって、完全な属国として全世界に宣言してしまえば、簡単に捨てることができなくなってしまう。
 六角国がアテルマ国の法律を自由にしたのは、別にアテルマ国のためではない。見捨てる時の口実として、属国ではないと言えるようにするためだったのだ。
 実際に、アテルマ国を属国としている間、アテルマ国の資源を独占し、採取していた。アテルマ国にもまとまったお金が入ってくるので、どちらにとっても嬉しいことだった。アテルマ国としても、独立したからといって、パッとした産業があるわけではなく、もし六角国からの収入がなければ、すぐに立ち行かなくなっていたに違いない。そういう意味でも、六角国の属国として朝貢することは、メリットでもあったのだ。
 朝貢というと、まったく見返りのないように聞こえるが、いくら属国であっても、そこから取れる資源を利用する時は、外貨を支払うという世界秩序がすでにできていた。
 ただ、属国なので、他の国に売るよりもかなり安価での取引になるが、属国になることで、安全保障まで賄ってくれるのだから、朝貢も悪いわけではない。国連としては、最低限の保証金額だけ定めておいて、あとはそれぞれの国家間での話し合いによって決めることを推進している。国連としては、不介入ということだ。
 実際に六角国は、アテルマ国の資源がなくなれば、アテルマ国から撤退した。それは実に鮮やかで、電光石火とはこのことだった。
 六角国にとって、無駄なことはなるべくしないようにしていた。撤退が長引けば長引くほど、アテルマ国からの非難、そして国連から介入があり、撤退が事実上難しくなってしまうことを危惧していた。
 秘密主義は六角国にとって専売特許だと言えよう。これまでいろいろな苦難を乗り越えることができ、曲がりなりにも大国として国連に影響力を持つことができるようになったのも、彼らの秘密主義が大いに役に立っていた。
「民主国はこういう時、他の国と連携してなどというのだろうが、相手と深く関われば関わるほど、それぞれの都合が連携を危うくする。下手をすると裏切られることにも繋がらない。最後はやはり自国なんだ。他の国に気を許すことは許されない」
 これが、六角国の国としてのポリシーだったのだ。
 ただ、一つだけ問題があった。
 アテルマ国の内乱やクーデターを恐れて、アテルマ国内に、軍隊を持つことを許さなかった。撤退の時のリスクと、クーデターや内乱を考えると、どうしても、後者を優先してしまわなければいけないので、この選択は無理もないことだが、実際に撤退してしまうと、アテルマ国の治安をどうするかが国連で問題になる。その時に非難を浴びるのは分かっていて、それは覚悟しておかなければいけないだろう。
 しかし、その問題もさほど難しいことではなかった、
 軍隊に関しては、臨時として国連軍が常駐することになったが、
「それ以降は永世中立国として運営しよう」
 という意見が水面下で進んでいた。
 もちろん、軍隊は必要だが、それこそ、必要最小限の装備しか持たないことを約束させられた。
 ただこの話は国連でも一部の人間しか知らなかった。アテルマ国首脳はもちろん、六角国も知らなかった。アテルマ国から完全撤退を行ったタイミングで国連軍が入国。波乱万丈の体制が始まろうとしていた。
 元々、アテルマ国は国としてのほとんどを、鎖国政策として歩んできた。入ってくる情報は首長国である六角国からだけで、これも情報操作されていた可能性がかなり大きかった。
 開国してから入ってきた情報に戸惑いを隠せずにいる中で、今度は六角国が撤退しようとしている。
「親に見捨てられた子供じゃないか」
 とアテルマ国の一部の上層部は不満を漏らしていたが、元々カメリス民族の血を引いている人たちが中心になった国、頭の回転と、切り替えは早かった。
 少し無理をしてでも、国家としての体制を整えなければならない。
 そのことをアテルマ国の首脳は分かっていた。六角国が撤退し、軍隊が曖昧な時期に、アテルマ国の首脳は、新しい法律の改正に取り掛かった。
 しかし、幸いなことに、アテルマ国の法律は、六角国のそれとは違っていた。六角国が撤退時のために目論んでいたことは、この時になって立証されたのだ。民主体制色が色を持っている法律に基づいて、国家体制を整えていけばいいのだった。
 アテルマ国が独立してから考えることは、軍隊に関しては国連に任せておけばいいので、後は法律の整備だけだった。のちに、
「史上類を見ないとんでもない法律」
 と揶揄された法が、いよいよ作成されるという事態となっていったのだった……。

第二章 悪法制定

 六角国が完全撤退し、それまでの混乱が収まってきたのは、アテルマ国独自の法律が生まれたからだった。法律の内容に関しては、賛否両論あった。しかし、
「アテルマ国のことはアテルマ国で決める」
 という、当時のアテルマ国国家元首の国連に対しての提案で、提案がある程度強硬だったこともあり、
「これ以上介入すれば、内政干渉になってしまう」
 という国連議長の提案で、アテルマ国を刺激しないようにしていた。
 何しろ最近までは鎖国をしていて、開国したかと思えば首長国である六角国が撤退し、完全に孤立してしまった感のあるアテルマ国だったのだ。
作品名:アテルマ国の真実 作家名:森本晃次