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なんとなく歪んだ未来

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「ロボットやサイボーグというのは、しょせん人間が作るもの。そして人間にはできないことをそのロボットにやらせるために、人間よりも強固であり、さらに壊れることのない強靭さを持っていないといけないのよ。でも、そのせいで、ロボットが反乱を起こしたり、人間の言うことを聞かなくなったりすれば、下手をすると人類の滅亡に繋がるのよ。それを予見した小説がSF小説としてたくさん出回っている。小説にしてしまうのは、それはあくまでも発想であり、空想物語にしてしまうと何でもありですものね。でも学者はそうは行かない。ハッキリとしたものにしてから発表しないと、学者としての地位が危なくなる」
「学者というものはそういうものさ。社会問題にしなければいけない場合もちゃんとした理論を説明できないと、ただのほら吹きになってしまうんだ」
「そうね。ロボットというものを考える時、まず学者の考えていることを頭に入れておかないと、誤った方向に発想が行ってしまう。特に学説よりも小説のフィクションの方がたくさん表に出ているので、そちらがまるで学説のようになってしまうのよ」
「人間を攻撃したり、人間に敵対する方が、小説やアニメとしては売れるからね。でも、同じロボットでも人間が操縦するという巨大ロボットの発想は、ここでいうロボット工学とは少し違うよね。いわゆる人型のロボットで、人工頭脳を持つことによって、思考能力を持ったロボットのお話になるんだよ」
「ええ、ロボットというのは、サイボーグだったり、アンドロイドだったり、まずは人間の命令にしっかり従うという頭脳回路が必要になってくるのよね」
「でも、人間の言うことには絶対だとして、人間というのはたくさんいるのよ。誰の言うことを最優先にしていいのかというのをしっかり持っておかないと、ロボットは混乱してしまい、動けなくなってしまう」
「それだけじゃないわ。優先順位という意味では、自分と他の人間に対しての優先順位もあるわよね。自分を犠牲にしてでも、人を助けなければいけないという発想よね」
「でも、それだって、その時の状況にもよるわよね。助けなければいけない人間が、ひょっとすると他の人が助けることができるかも知れない。あるいは、自力で危機を抜け出すことができるかも知れない。そんな状況を即座に判断しないと、自分が壊れてしまうだけで、助けたことにならない。人間が後から判断して、『ロボットが自爆したんだ』って思われると、何のためのロボットなのか分からないよね」
「ロボットの状況判断というのは難しいわよね。しょせんは人間が作るんでしょう? 人間よりも優れた発想を持った回路を作ることが果たしてできるかというのも難しいわよね。作る人の頭脳がどこまでなのか分からないし」
「そうなると、誰の頭脳が一番ロボットの頭脳としてふさわしいかということを探して、そしてその頭脳を大量生産することによって、人工頭脳の一部にすることになるんだろうね」
「だとすると、いろいろばパターンで人間には無数の判断や、無限の発想が伴ってくる。それを一つ一つ潰していかなければいけないとすれば、それは考えられないほどの労力になってしまうよね」
「そうなると、ロボット開発なんてできないってことになるわよね。つまりは、人間以上の頭脳を持ったものは、この世には存在しないということになる」
「そこが大きな矛盾だったりするのよね。ロボットとまではいかないけど、今の世の中には機会やマシンが溢れているでしょう? 人間が操作することで完全なものにすることができるマシン。コンピュータがその代表よね」
「ロボット工学というのは、その矛盾を少しでも少なくしようとしていることなのかも知れないよ」
 修のその言葉で少し会話が落ち着いた。
 二人はお互いに相手が話をしている間、
――自分なら、こう言うのに――
 と考えながら相手の話を聞いていた。
 お互いに、その時に考えていたことを相手が話してくれたことに満足し、
――会話が途切れることはないだろう――
 と思っていた。
 途中に休憩が入ったのは、お互いに話し疲れたというのもあったが、
「聞き疲れた」
 というのも、その本音だったに違いない。
 ロボットの話というのは、考えてみれば不老不死にも繋がっていく。
「ロボットを開発し、ロボットの中にその人の頭脳を入れ込むことによって、メンテナンスをすることで死なない肉体を得ることができる」
 という発想もあったからだ。
 だが、ロボットと言っても、金属なので、いずれは錆付いて朽ち果ててしまうことだろう。しかし、これも冷凍保存の発想と同じで、
「時代が進むほどに科学が発展して、錆付くこともなく、永遠にメンテナンスによって生き続けることのできる肉体を得ることができる」
 という発想を、少しずつ忘れてしまっていたような気がした。
 やはり、ロボット工学という発想が頭打ちになり、ロボットのいいところを次第に見落としてしまう風潮になっていたのではないだろうか。
 愛梨とそんな話をしていると、時間画経つのを忘れてしまうほどだった。
 浦島太郎の話から、ロボット工学の話になったのは、あの時、
――どうして、こんな突飛な発想になったのだろう?
 と思ったが、その発想も分からなくもなかった。
 ただ、それは後になってから感じたことで、その時に感じた思いも、やはり「矛盾」だったのだ。
「浦島太郎のお話って、続きがあるのをご存知ですか?」
 と愛梨は言った。
「いいえ」
 修は、浦島太郎の話に矛盾を感じてはいたが、続きがあるというところまでは知らなかった。
「あのお話はね。おかしいところがあるのよ。亀を助けた浦島太郎が、竜宮城で楽しく過ごしたのはいいとしても、戻ってきて、玉手箱を開けておじいさんになってしまったというお話でしょう? 実はそうじゃないのよ」
「というと?」
「乙姫様が渡した玉手箱を開けるとおじいさんになったんだけど、その後ツルになったというお話があるのよ」
「そうなの?」
「ええ、そして、その後にもいくつか説があって、ツルになった浦島太郎はどこかに飛んでいって、神様になったというお話だったり、乙姫様が亀になって陸に上がって、ツルになった浦島太郎と一緒に、末永く生きたというお話があるのよね。もっと他にもあるかも知れないんだけど、最後悲劇ではおかしいという考えがあるのよ」
「それだったら分かる気がする。だって、亀を助けたのに、最後にはおじいさんになってしまうという罰が待っているというのでは、おとぎ話としては成立しないと思っていたからね」
 と二人は、話を少し置いて、考えていた。
 しばらくしてから口を開いたのは、愛梨だった。
「やっぱり、矛盾があるのよ」
「そうだね。矛盾というのは、いつの世にだってあるものだよね」
「ところで浦島太郎のお話に似たお話は、全国にはいっぱいあったり、昔からの歴史書だったりするものに、似たようなお話もあるのよ。日本書紀だったり、万葉集だったりね」
「愛梨は、浦島太郎のお話について、調べてみたりしたのかい?」
作品名:なんとなく歪んだ未来 作家名:森本晃次