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落ち武者がいた村

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 しかも、その内容は、滝つぼがまるで急に現れたような発想だった。
 そういえば、今の時代、この村にはどこを探しても、滝つぼなど存在していない。
 しかし時々、村人の中で、
「ゴーッという、勢いよく水が流れる音がするんだ」
 という話を聞かされた。
 古文書を読んだ緒方は今では、
「この村で何かがある時、竜巻を引き起こすために滝つぼが急に出現するんじゃないだろうか?」
 と考えた。
 そう思えば、古文書を読んでいてリアルな気分になるのも、最初から滝つぼの存在を意識しているからではないかと思えてくる。
 しかも、最近では、
「この古文書に書かれていることは、未来に起こることも予言しているんじゃないだろうか?」
 とも思えてくる。
 一つに信憑性を感じると、どんどんとリアルな発想が思い浮かんでくる。これも古文書をリアルに感じて読み進んでいるからではないかと思えてきた。
 この村は、昔から、
「存在しない村」
 と言われていたという。伝説の村だという噂がもっぱらだと言われているが、なまじ嘘でもないような気がしてきた。
「この村を出ることも。入ることも許されない」
 元々は、この村を出ることが許されていたが、落ち武者の殺された時代、村を出ようと考えていた人が、村を出る時の首謀者から、
「この村を出るからには、決してこの村を振り返ってはいけない」
 と言われていたという。
 その話を信じなかった人が振り返ったということまでは古文書に書かれているが、その人がどうなったのかは書かれていない。
「滝の音は聞こえるのに、滝を見つけることができない」
 と言っている人は、確かに滝のあったと目される場所を探していた。
 湿気のあるはずのその場所には、木々が生い茂っている山もない。人の気配はするのに、誰もいないその場所は、無数の霊が漂っているかのようだ。
「本当にこんなところに滝が?」
 そこにあるのは、無数の白い石がまるで墓石のように、広がっている平原だったのだ……。
 そして、その場所に石が並んでいるのが見えるのは、この村の出身ではない緒方だけだったのだ……。

                 (  完  )



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作品名:落ち武者がいた村 作家名:森本晃次