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秘密結社ドゲッサー編第一話「オレたちが仲間になったわけ」

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 「不味いな、タビヲンの官憲に、この箱の中身を見られるわけには、いかんだろう。奪われてしまう」
スカイは言った。
 「そうだ、ここは休戦という事で、お互いに取り分の話は後回しにして、何とか、この事態を切り抜けることを考えようぜ。早いところ、店を出るぞ。長居は無用だ」
 スカイ達は、慌てて、布で覆った宝箱を二人で持って、いそいそと宿屋を出た。コロンは、立ったまま呪文書に書き込みを開始していた。コロンに出ると言ってスカイ達は、三人でチェックアウトした。そしてラバに荷物を積み込んでナラシダ街道を東南のコモンのイネンシ王国に向けて歩き出した。

マグギャランは言った。
 「あ、思いだしたぞ、あのノッポの小僧だ。髪型が手配書の似顔絵とソックリだった」
 スカイは言った。
 「何だ、それは」
 マグギャランは言った。
 「無踏荒野に行く途中で、もめ事があっただろう、騎士気取りのノッポの小僧が、俺を殴り飛ばした事だ。馬鹿力で俺は一撃で伸されてしまった」
 スカイも、思いだした。
 それはスカイと、マグギャランがタビヲン王国をバカにしていた事が原因で始まった揉め事だった。
 スカイと、マグギャランは、どうせ、タビヲンの人間にコモンの言葉は判らないだろうと思って、適当な事を宿屋の下の小料理屋で言っていたのだ。その時は、依頼主がドラゴン族のミレルであるとは、まだ知らなかった。
そうしたら、そこに居た、鎧を着た、やたらと背の高い少年がトレーダー語が判って、カンカンになって怒ってスカイとマグギャランに詰め寄ったのだ。
 だが、スカイとマグギャランは適当に、あしらって置いた。
だが、少年が目ざとくマグギャランが胸にぶら下げている、コモンの騎士証を見つけて更に怒りだしたのだ。
そして決闘をマグギャランに申し込んだ。だが、マグギャランは適当に、あしらうつもりだったが。再三、言うため、素手での決闘となった。
 まあ、始めて見たら、その少年は大した腕ではなく、大振りのパンチをマグギャランは全部見切って避けていたが。とにかく執念深くて、ヘトヘトになっても殴り続けて、しまいにはマグギャランは油断していて、うっかり一発顎に食らってダウンしてしまったという情けない話であった。
ほんの些細な出来事では在った。
 何で、あの男がマグギャランの名前を名乗っているのだろうか?
 スカイは疑念を持った。
 スカイは言った。
「とにかく厄介な話だな。俺達に恨みでも在るんじゃないのか。厄介を押しつけようとして名乗ったに違いない」
 言っている内に何か被害妄想に取り憑かれているような気がしてきた。
 マグギャランが言った。
 「やっぱり、お前の持っている「黒炎刻」が不幸を呼び込むのではないのか。いい加減捨てろ」
 スカイはマグギャランの言葉を無視してコロンに言った。
「コロン姉ちゃんも、しっかりしていてくれよ。何処で官憲に捕まって、宝物を奪われるのか判らないからな」
そして黒炎刻の鍔の辺りを撫で回した。
 おー良い感じだ。
 スカイは満足した。
 コロンは杖を脇に挟んで呪文書を開いて魔法の数式を書き続けていた。
 だが、空には雲が立ちこめていて薄暗い曇天だった。

 スカイは向こうからやって来る、騎馬に乗った武装した二人組を見た。
 スカイは言った。
 「何だ、あの馬鹿でかいヘルメットは」
 よっぽど頭が馬鹿でかいのか、巨大なフルフェイスのヘルメットを被った奇怪な全身鎧の怪人と、その横には金属の出っ張りが沢山付いた仮装の仮面のような赤いフルフェイスのヘルメットを被ったダボダボの紫の服とピッタリした肘まである手袋と、膝まであるブーツを着けた人物が二人、先頭に居た。
 後ろには、槍やら、奇怪な形の武器を持った兵士達らしい者達が並んで徒歩で歩いていた。巨大なハサミを長い木の棒の先に付けているバカみたいな奴も居る。その他鉤爪を棒の先に付けた武器とか、釘が生えている鉄の金棒など、取りあえずビビラせようとしている事が、ありありと判る酷い髪型をした奇怪な一団だった。
スカイは通報が在ったのかと思案を巡らした。
 マグギャランは言った。
 「通報が在ったのかもしれん」
 スカイと同じ事をマグギャランも考えているようだった。
スカイは言った。
 「やはり、そうだろうな。だが宿屋とは逆の方から来ているぞ」
 マグギャランは声を潜めて言った。 
 「不味いな、街道の左右は草原地帯だ。逃げも隠れもできんぞ」
確かにそうだった。丘の途中に設けられたナラシダ街道の右の方は、なだらかに登るように傾斜しており、左の方は、なだらかに下っていく方に傾斜して森があった。
 スカイはマグギャランに言った。
 「今から草原を宝箱を持って走って逃げ出すか?だが、相手は馬に乗っているぞ。簡単に追いつかれてしまう」
 マグギャランは言った。
 「いや、そうも行かぬだろう」
スカイは宝箱を、くくりつけたラバのベルトを緩めながら言った。
 「だが、万が一の為に備えて、ラバにくくりつけてあるベルトを外して置く。これで何時でも宝箱を持って逃げ出せるだろう」
マグギャランは言った。
 「だが、どうした物か、あの連中は先頭の二人以外は馬に乗っては居ない、まず、走って逃げ出して。左の方の下に見える森へ逃げ込む、馬に乗って追いかけてきた所を、先頭の二人を倒して馬を奪い、そして後は兵士達を捲けばいい」
 スカイは言った。
 「殺すのか」
 スカイは嫌な顔をした。
マグギャランは言った。
 「ここは野蛮な国タビヲン王国だ。郷に入れば郷に従えだ。タビヲンのルールで、やればいい。場合によっては、あの武装集団の殲滅も、やむを得まい」
スカイは言った。
「それは、不味いだろう」
 マグギャランは言った。
 「それなら、財宝を守るために他に、どんな方法が在るというのだスカイ」
スカイは言った。
 「取りあえず、知らん顔をして通り過ぎようぜ」
 マグギャランは怒った声で言った。 
 「何てデタラメな方法だ。もっと他に方法が在るだろうスカイ。頭を使え」
 スカイは言った。
 「だが、もう連中と距離が無い、逃げ出しようもないだろう。賄賂が通用するとも思えないな。タビヲン人相手なら全部奪われてしまうだろう」
スカイの知っているタビヲン王国の噂を総合すると、そういう結論が出てきた。
 マグギャランは言った。
 「覚悟を決めろよスカイ。場合によっては一思いに剣で殺れ。戦いは先攻の方が有利なのだ。先に仕掛ければ良い」
 スカイ達は、奇妙なヘルメットの集団と、どんどんと近づいていった。
スカイ達とヘルメットの二人を先頭にした集団は、すれ違った。
スカイは目を合わせず、真っ直ぐ首を伸ばして歩いていた。
くぐもった声が聞こえた。
 「おい、オマエ達」
 どっちのヘルメットが喋ったのかは判らなかった。
何か子供っぽい声だった。声変わりしていないのかも知れなかった。
マグギャランが剣の鯉口を切る音がした。
スカイは、そのままラバの宝箱を押さえて進んだ。
 くぐもった声が聞こえた。