小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

秘密結社ドゲッサー編第一話「オレたちが仲間になったわけ」

INDEX|5ページ/46ページ|

次のページ前のページ
 

 「何だ」
 スカイは辺りを見回した。
マグギャランも辺りの雰囲気が変わったことに気が付いたようだった。
 マグギャランは言った。
「何か、感じが悪いな」
スカイはカチカチのパンに噛みついて言った。
 「それにしても不味いスープだな得体の知れない迷彩模様の不味い豆と塩しか入っていないだろう。牛か豚か、せめて羊か山羊の骨ぐらい入れて出汁ぐらい取れよ。それにしても。このパンもコチコチだし、ロクな国じゃないな。今までは茹でた紐のように細長いイモと豆のスープしか出なくて、やっとパンが食えると思ったらこんな代物かよ。行きも、そうだったし、早くコモンの飯屋で食い物が食いてぇよ」
何かカビ臭かった。
マグギャランは言った。
 「兵士の食料と同じだ。こういう物はな、スープに浸して柔らかくしてから食うのだ。確か行きにも言ったな」
 そして、マグギャランはパンをスープに浸した。
 コロンは相変わらず集中して呪文書に書き続けていた。杖の先端に懐中電灯の魔法を使って小さい炎の明かりを灯して呪文書に一心不乱に何かよく判らない魔法の数式を書き続けていた。
スカイは、怪訝な雰囲気の店の中を見回していた。
 何故だ、何故、こんな風に異様な空気が漂っているのだ。
 スカイは回りを見た。壁には何かが書いてある。張り紙が書いてあった。だが、スカイはタビヲンの言葉は喋ることには不自由はし無かったが、文字は変わった文字を使っていて読みづらかった。スカイには特技として余所の国の言葉を直ぐに理解できる能力があった。どういう訳か、子供の頃から色々な国を歩いているせいか言葉が直ぐに判るのだ。だが、タビヲンの文字の方は、どうも理解は難しかった。本屋で買ったタビヲン王国、日常会話集で覚えた、宿屋や、食い物ぐらいしか綴りを理解できなかった。もっとも、コモンで使われている文字なら、理解できるのだが。タビヲン王国では他の国とは違う変わった文字を使うようであった。
壁には赤い文字で顔写真が貼ってあった。
文明の発達から取り残されたようなタビヲン王国でも顔写真の入りの手配書が配布されるような時代になったようだ。これは今までに何度も見てきた写真でもあった。多分何処にでもある指名手配の写真のようだ。スカイと同じぐらいの年格好の少年二人に、中指立ててアカンベーしている耳の尖った赤毛の少女が一人。カメラ目線で笑顔の金髪の少女が一人。長髪の黒髪のイメケン一人に。覆面の男らしいのが一人、最後の覆面の男だけ写真じゃなくて画で描かれて新しく貼ってあった。スカイも初めて見た。
 スカイぐらいの歳で、人畜無害そうな顔をしているが犯罪者として、相当広範囲に指名手配をされているようだから、コイツラは、きっと極悪人なのだろう。
 まあ、噂に聞くタビヲン王国らしい話だな。
 スカイは一人頷いて納得していた。
 マグギャランも指名手配の紙を見ていた。
「何だ、ここにも貼ってあるのか」
スカイは言った。
 「ああ、そうだよ、お前、タビヲンの文字を読めるか。俺は、さっぱり判らねぇ」
 マグギャランは言った。
 「いや、俺も読めん。そういえばコロンは魔法使いだから読めるかもしれん」
 スカイは言った。
「指名手配だろう。コイツラは犯罪者なんだろうな」
 マグギャランは言った。
 「いや、違うかもしれん。あの指名手配書の中にいる一人は有名な剣士でタビヲン王国「魔獣」軍団の元将軍だ。ハーベスにいた頃に見たことがある」
 スカイは言った。
 「なんで、そんな奴が指名手配になるんだよ」
 マグギャランは言った。
 「それは、政治とは難しい物なのだ。タビヲン王国は混沌の大地を巡って混沌の大地の原住民や亜人類達と争いを起こしていたから色々と在るのだろう。百年ぐらい前からコモンとフラクター選帝国の代理戦争だったのだからな、混沌の大地戦争は」
 スカイは言った。
 「お前も、よく判って、いないようじゃないか」
 マグギャランは言った。
「まあ、騎士は戦うことが仕事だからな。あまり政治の事は気にしなくても良いのだ。昔は一夜漬けで政治関係の面接試験を、しのいだ物だ」
スカイは言った。
「そういう奴が必ず狡賢い政治家にハメられて殺されるんだよ。お前、騎士辞めて正解だよ」 
 マグギャランは言った。
 「いや、コモン共通国家資格の騎士の資格は、一度取れば更新無しで一生使える便利な物なのだ。余所の国の騎士団にトレードされることも出来るのだ。だから未だに俺は騎士ではある」
 スカイは言った。
 「お前、変だぞ、最近やたらと、騎士だった頃の話ばかりしているだろう」
なんか辛気くさい話だった。スカイは原則的に、そう言う話は嫌だった。
 マグギャランはコロンに言った。
「そうか。そうだろうな、果たせぬと思っていた誓いが果たせそうになってきたのだ。おい、コロン、あの壁に貼ってある手配書の文字を読めるか」
 だが、コロンは呪文書に向かって万年筆を走らせ続けていた。
スカイは言った。
 「おい、コロン姉ちゃん」
 スカイはコロンの肩を叩いた。
それでもコロンは万年筆で書き続けていた。
 スカイはコロンの肩を揺すった。
 コロンはムッとした顔をスカイに向けた。
 スカイは言った。
 「あそこに貼ってある手配書の文字を読めるか、マグギャランの奴が気になっているらしい」
 スカイは手配書を指さした。
 コロンは万年筆に蓋をして杖と、インクの乾いていない呪文書を開いたまま持って手配書の前に行った。
 スカイとマグギャランは宝箱を持ったまま付いていった。
コロンは杖を脇に挟んで眼鏡を直して指名手配書を見た。
 コロンはボソボソの声で言った。 
 「…緊急指名手配、極悪非道のテロリスト達。見かけたら最寄りの諜報組織「鉄格子の糸電話」の出先機関へ」
スカイは言った。
 「読めるのかコロン姉ちゃん。スゲェぞ、タビヲンの文字なんて誰も読めないからな」
 コロンは頷いた。
 コロンは読み上げ続けた。
 「首班、サフィア・ヨーアック以下、政府転覆を企てる極悪非道のテロリスト一味。ターレン王子、ロア・キステリ、アシュカ・ヨーアック……」
 スカイは頷きながら言った。
 「まあ、何処にでもある権力争いだな。この首班という奴が王子を担ぎだして居るんだろう。俺達、庶民には全然関係の無い話だ」
 コロンがボソリと言った。
 「……マグギャラン」
 マグギャランは言った。
 「ん、俺を呼んだかコロン」
 コロンは首を横に振った。
コロンは言った。
 「ここにマグギャランって書いてある……そして、これが指名手配者マグギャラン」
 コロンは覆面を被った画の下に書いてある文字を指し示した。
スカイは、マグギャランの肩を叩いて言った。
 「何で、お前が指名手配されて居るんだよ。タビヲンで何かやったか?」
 マグギャランは首を傾げた。 
「いや、身に覚えはない」
 スカイは、マグギャランに小声で言った。
 「だが、ようやく、謎が解けたぞ。何故、この宿屋の下の小料理屋で空気が急に寒くなったのかが」
 マグギャランも小声で言った。