秘密結社ドゲッサー編第一話「オレたちが仲間になったわけ」
「ですが、黒竜王は大きな過ちを犯したのですよトパジア。黒竜王の軍勢はタビヲン王国に根を張らない、外国の軍勢だったのです。タビヲン人の為の、タビヲン人による、タビヲン人の未来を築く事が出来なかったのです。サフィアはタビヲン人を殺すことに苦しんでいたはずです。サフィアは「超ケダモノ軍団」の六本頭の一人だったのですから。ですが、サフィアと、黒竜王は乳母兄弟だったのです。私の母クリスティア・ヨーアックが黒竜王の乳母を務めたのです。サフィアはタビヲン王国を裏切る事になってしまいましたが、タビヲン王国の変革を目指す黒竜王の理想に従い続けました」
暗黒騎士は言った。
「タビヲン王国の変革ですか」
暗黒騎士のママは言った。
「そして、今、サフィアは、黒竜王の遺志を継いで、ターレン王子を担ぎ出しました」
暗黒騎士は言った。
「なぜ、黒竜王はターレン王子を後継者に指名したのでしょう。私と同じ十四歳です」
暗黒騎士のママは言った。
「判りません。王太子でありながら、最強の剣士だった黒竜王とは、違う事は間違い在りません。ただ、トパジア、お前の祖母、クリスティア母様は、ターレン王子は黒竜王と違い、徳による治政を行える人物だと言っていました。そして、クリスティア母様は非常に恐れていました」
暗黒騎士は、首肯できず不思議に思って言った。
「まだ十四歳のターレン王子が、徳による治政ですか」
暗黒騎士のママは言った。
「これが本当なら、タビヲンの未来には幸いなのかもしれません。タビヲン人を外国の軍隊で切り伏せ、ガルガンダー陛下を廃位に追い込んだ黒竜王とは違います。トパジア、必ず、コロナ・プロミネンスをタビヲンに連れてきなさい。タビヲンは今、力さえあれば、どんな人間でも欲しいのです。コロナ・プロミネンスが人殺しを嫌うような人間なら、尚更信頼も出来ます」
暗黒騎士は言った。
「母上、コロンに会いますか」
暗黒騎士のママは言った。
「ええ、会いましょう」
暗黒騎士は案内をした。
暗黒騎士はコロンを「獣の縄張り」の庭園に案内していた。丁度涼めるように植物で覆われた緑のカーテンと緑の天井を作っている下にコロンは居た。
庭園の椅子で呪文書に万年筆で書き込みをしているコロンを見た暗黒騎士のママは困惑した声で言った。
「ずいぶんと小柄なのね」
暗黒騎士は言った。
「そうです。見かけは全然冴えませんが、炎の魔法を使わせれば、「超ケダモノ軍団」の二千騎を止め。伝説の魔法「隕石落とし」を成功させました」
暗黒騎士のママはニコッと何時もは見せない笑顔を見せた。
暗黒騎士のママは言った。
「でも、可愛い娘さんね。何時も一生懸命に魔法の勉強をしているの?」
暗黒騎士は言った。
「ええ、いつも異常に集中しています。ですが、母上、父上の話ではコロンの魔法は、禁術だそうです」
暗黒騎士のママは眉をひそめた。
「サフィアと同じ禁術を使う魔法使い」
暗黒騎士は暗黒騎士のママを案内した。
暗黒騎士は言った。
「来てください、母上」
暗黒騎士は、コロンの肩をバシバシと叩いた。短い旅の間で、判った事は、コロンが呪文書に向かって集中していると、バシバシしないと、気がつかないからだ。
コロンは、暗黒騎士の方を見た。
コロンは言った。
「……どうしたのトパジアちゃん」
暗黒騎士は言った。
「私の母上が「黒水晶宮」に来たから、挨拶して」
コロンは頷いて立ち上がった。
そして、暗黒騎士のママを見た。
コロンは顔を赤くしてモジモジしながら言った。
「……トパジアちゃんの、お母さん、私はコロナ・プロミネンスという魔法使い見習いです…えっと…よろしく、お願いします」
暗黒騎士のママは言った。
「好きな食べ物は何かしら」
コロンは言った。
「……なんでも食べるけれど、沢山は食べられない」
暗黒騎士のママは言った。
「好きな飲み物は在るの?」
コロンは顔を真っ赤にして言った。
「……お酒。でも飲むと…酔っ払って…暴れ出すから…出来るだけ…飲まないようにしているの。……未成年だし」
暗黒騎士と暗黒騎士のママは顔を見合わせた。
暗黒騎士のママが眼で合図した。
暗黒騎士は言った。
「ちょっと、コロン待っていて。母上と話しが在るから」
コロンは頷いた。
二人で離れた場所まで行った。
そして暗黒騎士のママは小声で暗黒騎士に言った。
「未成年で酒乱の天才魔法使い?」
暗黒騎士も小声で言った。
「母上、初めて聞きました」
暗黒騎士のママは小声で言った。
「多分、お酒を飲まなければ、おとなしい子なのでしょう。前向きに考えた方がいいでしょう。トパジア、コモンに行ったら、お酒を飲むとどうなるか、しっかりと確認するのですよ」
暗黒騎士は小声で言った。
「判りました母上」
スカイは独り言を言いながらタビヲン王宮「黒水晶宮」の中を歩いていた。
「退屈だな。タビヲン王宮の、ここはどこだよ。何で、ダンジョンがあるんだよ」
庭園のような生け垣で作られた、緑の迷宮の中をスカイは歩いていた。
何かの肉を焼いている匂いがした。
「なんだ焼き鳥でも焼いているのか?」
スカイは匂いのする方角へ歩いて行った。
迷路の回廊沿いの中庭のような場所に匂いの元は在った。
メガネを掛けた背中に巨大包丁を背負った女が、巨大なグリルの上でフライパンを使って何かを作っていた。フリルの付いた紫色の上着に、フリルが沢山付いて膨らんだミニスカートからナマ足が伸びていて、ローファーを履いていた。
「何か、変な肉の匂いだな。なんだよ、この肉は」
巨大包丁女は言った。
「ほう、お目が高い。ていうか良い鼻を、していらっしゃる」
スカイは言った。
「何を作っているんだよ」
巨大包丁女は言った。
「それは言うまでも無いでしょう。食べ物に決まっております」
スカイは言った。
「なんで、わざわざ、こんな所で料理しているんだよ。なんで、普通に厨房で料理をしないんだよ」
巨大包丁女は言った。
「このような良い天気では、野外パーティが相場と決まっていますよ」
スカイは言った。
「確かに晴れているが、ここは、天井の無いダンジョンだろう」
巨大包丁女は言った。
「一口食べますか?」
スカイは言った。
「なんか、この肉の匂いが、どこかで嗅いだ記憶があるんだよな」
巨大包丁女は言った。
「ラクダですよ」
スカイは言った。
「俺は、ラクダ肉は食ったことがあるが、こんな匂いはしなかったな」
巨大包丁女は言った。
「失礼しました。カンガルー肉でしたか」
スカイは胡散臭く思いながら言った。
「お前、俺に何を食わせようとしているんだよ。食った瞬間、死ぬような危険なモノを食わせようとしていないか」
巨大包丁女は言った。
「失敬な。ほら、私が食べて見せましょう」
そして、焼いてる、スパムのような挽き肉を固めたモノをフォークで刺して食べ始めた。
作品名:秘密結社ドゲッサー編第一話「オレたちが仲間になったわけ」 作家名:針屋忠道