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秘密結社ドゲッサー編第一話「オレたちが仲間になったわけ」

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 「それは、キステリ伯爵の一夜限りの妻になることが嫌だからです。だから、ミドルンの騎士マグギャラン。あなたと結婚するように父上から言われました」
 マグギャランは溜息をついて言った。
 「なるほど、そういう理由か。お前が真剣な理由も判らないでは無いが、俺にも事情がある」
 シュラーヤは言った。
 「私を、愛して結婚をしてください。あなたの死んだ許嫁と同じように愛してください」
 マグギャランは言った。
 「シュラーヤ、俺は、その許嫁を、まだ愛している。俺は不器用だから、一人の女性以外を愛することは出来ないんだ。他の女性との出会いもあったが。俺は真剣に愛することが出来なかった」
 シュラーヤは言った。
 「あなたの心には私は住めないのでしょうか」
 マグギャランは言った。
 「無理かな。それに、お前は、まだ十六歳だ。俺の国では子供だ」
 シュラーヤは言った。
 「それならば、私は、あなたを待ちます。
私が二十歳の大人の女になったら結婚してください」
 マグギャランは言った。
 「俺は、後先の判らない冒険屋の自由騎士(フリーランサー)だ。俺より、いいタビヲン貴族の男が居るだろう」
 シュラーヤは言った。
 「キステリ伯爵に復讐されます。クトイハに連なる家門の者達を犠牲には出来ません」
 マグギャランは言った。
 「そうか、お前も大変だな、シュラーヤ。それならば、こうすればいい。結婚ではなく婚約を行えば良い」
 シュラーヤは言った。
 「婚約ですね判りました」
 マグギャランは言った。
 「それなら話しは纏まったな」
 シュラーヤは言った。
 「いえ、まだ、纏まっていませんよ」
 マグギャランは言った。
 「どういう事だシュラーヤ」
 シュラーヤはマグギャランの胸に埋めていた顔を上げて言った。涙の跡が残っていた。
 そして少し、はにかんだような顔をしていた。
 「私には、まだ、あなたの心の中に居場所がありませんよ」
 マグギャランは言った。
 「シュラーヤ。キステリ伯爵から逃れる事が目的では無いのか」
 シュラーヤは言った。
 「違います」
マグギャランは言った。
 「それならば何だ?」
シュラーヤは言った。
 「私は、あなたの死んだ許嫁と同じように愛して欲しいのです、ミドルンの騎士マグギャラン」
 マグギャランは言った。
 「俺は、そんなに器用に出来ていないさ」
シュラーヤは笑顔で言った。
 「タビヲンの女は、愛した男と、一生添い遂げます。あなたの死んだ許嫁とは別の居場所を、あなたの心の中に作りだします」
 マグギャランは言った。
 「そうか、タビヲンの女は怖いな」
 シュラーヤは言った。
 「父上から二揃いの指輪を貰ってきました。合うか判りませんが、婚約の印に填めてください」
 そしてシュラーヤは、マグギャランから離れると、ブラウスとタイツ姿で、脱いだ上着のポケットから、金細工の小さな箱を取り出して開け、中から二揃いの金色の指輪を取り出した。赤い小さいダイヤモンドが手袋を填めても邪魔にならないように埋め込まれている。
シュラーヤは男性用の指輪をマグギャランに渡した。そして自分の指に女性用の指輪を填めた。
 マグギャランも填めた。何故か、マグギャランの指に丁度収まった。
シュラーヤは言った。
 「不思議です。私の指に丁度収まりました。指輪を直す金細工職人が必要でしょうか」
 マグギャランは言った。
 「いや、俺の指にも丁度収まった」
 シュラーヤは言った。
 「きっと、私たちは結ばれる運命だったんです」
 マグギャランは言った。
 「そうか」
 シュラーヤは笑顔で頷いて言った。
 「そうです」
 マグギャランは笑顔のシュラーヤを見て言った。
 「それより、その艶姿を、どうにかしろ、シュラーヤ。早く服を着た方が良い。目のやり場に困る」
 シュラーヤは自分の格好を見た。
 そして顔が赤くなった。両手でブラウスの胸元を隠し、ブラウスの長い裾から出ている白いタイツの足が内股になって言った。
 「え?見ないでください!」
 マグギャランは背中を向けながら言った。
 「判った」
マグギャランは切り子ガラスのグラスを取ってカシス水を飲んだ。
 後ろから、シュラーヤが服を着るゴソゴソした音が聞こえてきた。
 そして音が止まって、床の絨毯を靴底が叩く音がした。
 マグギャランは言った。
 「もう服を着たか?」
シュラーヤは言った。
「はい」
 マグギャランは振り向いた。
 シュラーヤは入ってきたときと同じタビヲン王国の女性騎士の制服を着ていた。
 だが、入ってきたときとは違って顔は明るかった。
 シュラーヤは両手を開いて倒れ込むようにマグギャランに寄りかかった。
 そしてマグギャランの胸に顔を埋めた。
マグギャランは言った。
「シュラーヤ……」
 シュラーヤは言った。
 「教えてください、あなたの死んだ許嫁は、どんな人だったのですか?」
 マグギャランは言った。
 「そうだな、何の特技も無かった。読書が好きだったが。魔法の本を読むことも無かった。女騎士や女魔法士には向いていなかった。ただ、騎士の家に生まれた女性だった。そして、俺の家も騎士の家で、家柄は釣り合っていた」
 シュラーヤは言った。
 「そうなのですか。私のような剣術や魔法が多少でも出来る女は嫌いですか」
 マグギャランは苦笑しながら言った。
 「俺の生まれた国の女性よりも、タビヲンの女は、お転婆すぎるな」
 シュラーヤは言った。
 「そうですか、私も、お転婆ですか。お転婆な女は嫌いですか?」
 マグギャランは言った。
 「シュラーヤはシュラーヤだ。俺の死んだ許嫁は、そういう何の特技もない平凡な女性だった」
シュラーヤは言った。
 「二十歳になるまで待っていてくださいね。私は、きっと素敵な女になりますから」

暗黒騎士はマグギャランの部屋の前で、シュラーヤが出てくるのを待っていた。
暗黒騎士の地獄耳でも、部屋の中で何が起きているか知ることが出来ないような、分厚い扉と壁だった。
 暗黒騎士は、マグギャランがスカイと同じぐらいに信用できなかった。暗黒騎士は元々人間不信だったが。スカイとマグギャランは全然信用できなかった。コロンを裏切って、二人で宝箱を持ち逃げしようとして、仲間割れをして取っ組み合いのケンカをして……
暗黒騎士は思った。
 長い、長すぎる。
 暗黒騎士は、シュラーヤが、猫の八方睨みで、マグギャランを動けなくして、無理矢理、婚約指輪を渡すモノだと思っていた。暗黒騎士は、マグギャランの剣の腕が大したこと無いと思っていた。「斬魔剣パラデイン」という聖剣の力で、スカイと同じように猫の八方睨みを破ったのだと考えていた。
暗黒騎士が、扉の前でイライラしていると、突然扉が開いた。
 そしてシュラーヤが出てきた。
そして扉を閉めた。
 シュラーヤは言った。
 「トパジア」
 暗黒騎士は怪訝に思って聞いた。
「どうしたんだ、シュラ姉」
シュラーヤは言った。
 「女を輝かせるのは殿方の愛のみ」
暗黒騎士は言った。