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秘密結社ドゲッサー編第一話「オレたちが仲間になったわけ」

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 「うん、うめぇ。タビヲンと言えば不味い食い物しか食っていなかったが、在るところには、まともな食い物が在るんじゃねぇか。うめぇよコレ」
 スカイは口を、もぐもぐさせながら言った。
確かに、ちょっと食ったことの無いような豪勢な味のする食事だった。
 マグギャランは言った。
「スカイ、コラ、馬鹿者、もう少しマシな食い方をしろ。俺を見て真似して食えと言っているだろう」
マグギャランはパンを千切りながら言った。
コロンはマグギャランの方をチラチラ見ながら、オドオドして真剣な顔でパンを千切っていた。
 スカイは言った。
「良いんだよ、どうせ、俺は、礼儀作法とも無縁な下町育ちの冒険屋だ」
 スカイは即席サンドイッチを食べていた。
暗黒騎士は言った。
「バカ丸出し」
肩の出た紫のドレスを着て髪を結い上げた暗黒騎士が器用にナイフとフォークを動かして言った。
シュラーヤは肩の出た黒いドレスを着ていた。そして俯いたまま食事には手を着けていなかった。
 なぜか居る、白と緑の服の中年の女が居た。暗黒騎士に顔が、よく似ていた。小皺が多いが。大体暗黒騎士の二十年後は、どんな顔になるかが、よく判った。
 女は言った。
「ふーん、君達が、ドラゴンのダンジョンから生還したんだね。騎士のマグギャランに戦士のスカイ・ザ・ワイドハート、魔法使い見習いのコロナ・プロミネンスで間違いないかしら」
 スカイはスープの皿を両手で持って口を付けて飲み干しながら頷いていた。よく判らないが美味いことは美味い濃厚なポタージュの様なスープだった。
 マグギャランがテーブルにナイフとフォークを置いて言った。
 「コラ!スカイ!馬鹿者!何でも良いから、せめてスプーンを使え!」
マグギャランがスカイの肩を押さえて、周囲にペコペコ頭を下げていた。
コロンに小皺の女が言った。
「そのコートに付いている紋章は四大元素魔法のシンボルよコロナさん」
 コロンは頷いた。
 暗黒騎士が言った。
 「四大元素魔法なんて聞いたこと無い、魔法使いの学派よ」
小皺の女がパンを手で裂きながら言った。
「四大元素魔法は遙か太古からある、最も古いかもしれない伝説の魔法使い達の学派よ。だけど、その内容に触れることの出来る者は誰も居ない。四大元素魔法を名乗る学派や魔法使いは多いけれど、どれも本物ではないのよ。でもドラゴンのダンジョンから帰ってきた魔法使いなら本物かもね」

ヨーアック・クトイハ侯爵の執務室に暗黒騎士は呼ばれた。タビヲンの騎士の服を着た剣士が二人、扉の左右で護衛をしていた。
 暗黒騎士は革のコートと革のスラックスを着てブーツを履いていた。
 暗黒騎士は伝音管に向かって言った。
「トパジアです父上」
 中から暗黒騎士のパパの声が聞こえた。
 「入れ」
 正確には伝音管から伝わる声で在った。
 暗黒騎士は黒檀で出来た悪魔のレリーフが施されたヨーアック侯爵の執務室の扉を開けた。ヨーアックの家紋である薔薇を持って中指を立てている右手を象った「薔薇と屈辱」の紋章が両開きの扉に彫られていた。
暗黒騎士は扉を開けて入った。
 中は幅が20メートル、奥行きが二十五メートルある細長い部屋だった。
 暗黒騎士のパパは巨大な机で刺繍が施された藤色のコートを着て書類を見ていた。
 暗黒騎士は机の前まで来て片膝を付いて頭を下げた。
 暗黒騎士のパパは言った。
「頭を上げろトパジア。立て」
暗黒騎士は頭を上げて立ち上がった。
暗黒騎士のパパは椅子に座ったまま暗黒騎士を見た。
 暗黒騎士のパパは言った。
「こうして面と向かって直接話したことは、生まれてから一度も無かったな。家の事はアステアに任せてある」
 暗黒騎士は言った。
「はい」
暗黒騎士のパパは言った。
 「お前は、フラクター選帝国の女学校にタビヲンから留学した経験がある、シュラーヤより、コモンの事は詳しいはずだ」
暗黒騎士は言った。
 「そう思います」
暗黒騎士のパパは言った。
「魔法使いコロナ・プロミネンスを、どう思う」
暗黒騎士は言った。
「ただの魔法使いです」
暗黒騎士のパパは言った。
「だが、二千騎の騎馬の軍勢を火炎壁で止めて、伝説の魔法となった「隕石落とし」を威力は小さかったが成功させた。ただの魔法使いでは無いだろう」
 暗黒騎士は言った。
「はい」
 暗黒騎士のパパは言った。
 「戦に使えると思うか」
暗黒騎士は言った。
「いえ、コロナ・プロミネンスは人を殺せません」
見ていて歯がゆかった。二千騎の騎馬の軍勢を全滅させられるような炎の壁を作れるくせに、人を殺せないから苦労して手に入れたはずの財宝を奪われる。バカと呼ぶにはバカすぎるし当てはまる言葉が思いつかなかった。
 暗黒騎士のパパは言った。
 「お前はコロナ・プロミネンスと友達になれるか」
暗黒騎士は言った。
 「私は誰とでも友達になれます」
 暗黒騎士のパパは言った。
「トパジア、お前に使命を与える。人殺しが出来ない魔法使いコロナ・プロミネンスを人殺しが出来るようにしてからタビヲンに連れてこい。そしてアステアを後見人としてコマンダーとして登録しろ」
 暗黒騎士は答えた。
 「わかりました」
だが、この使命に際して父親の真意を測りかねていた。暗黒騎士は見捨てられていたのだ。
暗黒騎士が、執務室の扉の外に出ると騎士の制服を着たシュラーヤが立っていた。
暗黒騎士は言った。
 「シュラ姉もパパに呼ばれたの?」
 シュラーヤは言った。
 「ええ。そうです」
 そしてシュラーヤは伝音管に話し中に入っていった。

 シュラーヤの父親は、執務室の中に座っていた。
 シュラーヤは机の前まで来て片膝を付いて頭を下げた。
 シュラーヤの父親は言った。
「立てシュラーヤ」
 シュラーヤは言った。
 「判りました」
そして立ち上がった。
 シュラーヤの父親は言った。
 「こうして面と向かって直接話したことは、生まれてから一度も無かったな。無様な失敗をしたなシュラーヤ。年上の、お前が、ドラゴンの財宝を確保する責任者だった。どう責任を取る」
 シュラーヤは言った。
 「判りません。自害すれば、よろしいのでしょうか」
 シュラーヤの父親は言った。
 「死ねとは言っていない。三人の冒険屋達がキステリと「決闘」をして死罪はチャラになった。トパジアは、あの三人の冒険屋達と一緒にコモンに行く事になる。そういう使命を与えた。だが、お前は、どうする、シュラーヤ」
 シュラーヤは言った。
 「どうすれば良いのか皆目見当が付きません」
シュラーヤの父親は言った。
 「重要な事は、お前が、これからタビヲン王国に居続けると、キステリが悪い噂を撒き散らすことになる。アイツは、そう言う男だ。
昔から、女よりも執念深く、姑息で卑怯な男だ」
 シュラーヤは怯えた顔で言った。
 「それでは、やはり、私には自害するしか道が無いでは無いですか」
 シュラーヤの父親は言った。