小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

秘密結社ドゲッサー編第一話「オレたちが仲間になったわけ」

INDEX|26ページ/46ページ|

次のページ前のページ
 

コロンの火炎檻ファイアーリー・プリズンの魔法が成功した。キステリは火炎檻の中に閉じこめられて捕まった。
スカイの黒炎刻とマグギャランの「斬魔剣パラデイン」はキステリに突き付けられた。
 コロンの火炎呪文の威力は鉄を溶かす桁外れの威力を誇っている。キステリが持っている「連れ散れの花びら」の二本の刃が溶けて折れた。
スカイは言った。
「手間掛けさせやがって」
 マグギャランは言った。
 「幾ら、剣の達人で在るとは言え、三対一は、明らかに、俺達を見くびりすぎだ。俺達三人はドラゴンのダンジョンを制覇したパーティだぞ」
キステリは踊るのを止めた。
キステリは言った。
 「降参する」

まずい。暗黒騎士は青ざめた。
 あの3人はタビヲンの男達のメンツに掛ける異常な執着心とプライドの高さを知らないのだ。「超ケダモノ」軍団の二千騎もの騎馬の軍勢を止めてしまった以上。勝ってもいけないし負けてもいけない戦いであることを判っていないのだ。このままでは、自分の立場が危ない事に暗黒騎士は動揺した。母のアステアは実子でない他の姉たちを全員嫁に出して除いた後でヨーアック・クトイハ侯爵家の家督を末っ子の自分に継がせるつもりでいる。元々、母のアステアはヨーアック侯爵家の次女なのだ。そして、それは暗黒騎士自身も望んでいることであった。キステリ伯爵の嫁にされるより、ヨーアック・クトイハ侯爵家を相続した方が良かった。キステリは、結婚した女は初夜を終えると直ぐ離縁する事で有名だったからだ。コロンが炎の檻の呪文を使っているが。どうやら、あの呪文は一定の時間、保つ呪文ではなくて集中が必要な呪文のようだ。暗黒騎士は、手枷と足枷が付いたままピョンピョンと両足で跳ねていった。

スカイの視界の端に暗黒騎士がコロンの背後に近づいてくるのが見えた。
 スカイがコロンに叫ぼうとしたときは、もう背後まで来ていた。
コロンは背後から跳ねてきた暗黒騎士に両手パンチで後頭部を殴られて帽子が飛んで前のめりになり倒れかかっている所を更に飛び膝蹴りを腹に入れられて気絶させられた。
火炎檻の呪文は途切れて、コロンは草地に前のめりに突っ伏して杖を握ったまま倒れた。浮いていた呪文書が空中から力なく落ちた。
キステリは自由になると、刃の一部がコロンの火炎檻に触れて溶けた「連れ散れの花びら」で、スカイとマグギャランの剣を跳ね上げて後ろに奇怪な歩法で距離を取った。
 キステリは言った。
「ウソ!降参したと言うのはウソ!」
 キステリは、「連れ散れの花びら」と左腕を振り回して踊りながら、ぬけぬけと大声で言った。
 スカイは叫んだ。
「おい、みんな見てんだぞ!お前は降参したんだろう!」
 キステリは言った。
 「いや、降参などしていない失敬な」
 マグギャランは言った。
 「今、降参したというのは嘘と言っただろう」
キステリは、ぬけぬけと言った。
 「しょうもない理屈をこねる輩だ。私は負けていないし、降参もしていない。そんな事言った記憶は無い」
マグギャランは言った。
「ヨーアック・クトイハ侯爵!どういうことだ!」
 エメランは笑顔で言った。
 「キステリは自分に都合の悪いことは直ぐに忘れるのだ」
スカイは叫んだ。
「あの女は何なんだよ!コロン姉ちゃんを殴って気絶させただろう!」
 スカイは倒れたコロンの横で突っ立っている暗黒騎士を指で指した。
エメランは、つまらなそうな顔で言った。
 「さあな、女同士の事だ。女とは感情的で時にヒステリーを起こす物だ。それに私は、「超ケダモノ」軍団の長だ、身内に不利なことを言うと思うのかね」
たしかにそうではあったが。
 キステリは、ため息を付くと言った。
 「まずいな、私としたことが、戦場の経験が鈍ったのか、敵の戦力を読み違えるとは。昔のように人を斬らねば勘は戻らぬものか。それでは人斬りで勘を戻すとするか」
スカイは砂時計を操っているタビヲンの騎士を見て叫んだ。
「おい、今、ソイツは砂時計を動かしただろう」
 キステリは言った。
「目の錯覚ではないかね」
 スカイは言った。
「砂が全然減っていないじゃねぇかよ!」
 キステリは言った。
 「それは、まだ時間が経っていないという事だよ。戦っている間は集中しているから時間が短く感じられるのだ。君達はゾーンに入っていたんだ」
スカイは言った。
 「そんな物入っていねぇよ!」
 キステリは言った。
「それでは、私も恐い顔をしようか」
 言った瞬間にスカイの身体は、吹き付けるような激しい流れをキステリから感じた。シュラーヤの「猫の八方睨み」よりも遙かに強烈な猛烈な圧力を感じた。スカイの身体は硬直した。殺気の圧力だった。
 キステリは言った。
「どうやら動けなくなったようだな。当然と言えば当然だ。こうやって動けなくしてから切れば良いのだ。戦場では自分の回りの敵を殺気を出して動けなくして近いところに居る者から順に切り捨てていけばいいのだ。剣の技など、戦さ場での働きには、さして必要とはならぬ物なのだよ。剣の振り方と殺気の出し方だけを知っていれば事足りる」
そして奇妙な歩き方で滑るように「連れ散れの花びら」と左腕を振り回して踊りながら近づいてきた。
 マグギャランは固まっていた。
不味い!
 だが、スカイの身体は動かず、口も動かなかった。
 キステリは「連れ散れの花びら」を振るった。
だが、刹那の瞬間にマグギャランの剣が上に上がった。だが、受け止めるには遅かった。
 キステリの奇妙な六枚刃の剣がマグギャランを切った。血しぶきが舞い上がった。
マグギャランは倒れた。
 キステリは言った。
「ふむ、奇妙な事が在るモノだな。私の出した殺気の中で動けるとは。即死とはならなかったか」
キステリは「連れ散れの花びら」と左腕を振るって腰をツイストさせて踊りながら奇怪な歩法でスカイに近づいてきた。
スカイの手に黒炎刻から力が流れ込んできた。スカイは武者震いをした。キステリの掛けてくる重い重圧が身体から消えた。
 キステリは言った。
 「ほう、これだけ濃厚に放った殺気の中で君も動けるのか、これは予想外だな。いや、やはり君の中にある、私を惹き付けて止まない野生の力なのか」
黒炎刻がスカイの身体を動かすように構えが変わっていった。
 剣を構えなさい。
 また、あの女の声が聞こえてきた。
黒炎刻がスカイの身体を動かし始めたのだ。
スカイは黒炎刻を背中に担いで構えた。黒炎刻の刀身から黒い炎が吹き出した。
 そして振るった。
キステリの「連れ散れの花びら」は黒炎刻の斬撃の前に真っ二つに刃が折れて、刃が吹き飛んだ。
スカイは更に黒炎刻を振りかぶった。
エメランは言った。
 「双方剣を引け三分経った」
 そして砂時計をエネルギー・ミサイルの魔法で破壊した。吹き飛んだ砂時計のガラス片で砂時計を管理していた騎兵が驚いた顔をした。
 スカイは黒炎刻を振るうのを止めた。