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秘密結社ドゲッサー編第一話「オレたちが仲間になったわけ」

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「こんなウチの娘二人など、どうでも良いだろうキステリ。財宝を確保することが我々の本来の軍事目標だ。十五億ネッカー(150兆円)以上の価値があるかもしれない財宝だ。鬼面丞が異常に執着している。財政難で近隣の国々から略奪する事で経済が成り立っていたタビヲン王国にとって、十五億ネッカー(150兆円)相当の財宝は喉から手が出るほど欲しい物だ。雑誌に載っていた、シュドへのインタビューによる情報によれば中身は、売って良し使って良しの財宝のようだ。十五億ネッカー(150兆円)分の担保にも使える。娘二人が捕まった罪は、財宝の確保を何とかしたことで相殺すればいい。手柄が欲しかったんだろうシュラーヤ、トパジア」
シュラーヤと暗黒騎士は同時に返事をした。
「はい」
その声には肩から力が抜けたような響きがあった。
キステリがエメランの方を向いた。そして言った。
「だが、エメラン。忘れてはならん、「獣」の名が付く我等が「超ケダモノ」軍団の掟を。このような浅はかな女達はタビヲンの男が身体を張って判らせなければならない。我等二人の剣の師ベルマー先生が草葉の陰で嘆いて居るぞ」
 マグギャランは言った。
 「剣士ベルマー!有名なオス剣ベルマー!確かフラクター選帝国出身の剣豪、屍(かばね)に殺されたという」
 スカイは、さっぱり判らなかった。
エメランは言った。
 「ほう、コモンでも有名な話か」
キステリが真剣な顔になって言った。
「ベルマー先生は歳だったから仕方は無かった。だが、ベルマー先生は、こんな女達を決して許しはしないぞエメラン。タビヲン王国「獸」軍団の獣の掟を忘れたか。1に好色、2に多淫、3に移り気、4に裏切り、5に略奪、6に謀略、この徳目を忘れてはならない。先人から受け継いだ伝統と言うものだ」
スカイは言った。
「そんな伝統捨てて置けよ」
 キステリは言った。
「はあ、仕方がない、異国人に辱められた君の娘二人を同時に嫁に貰ってやるとするか。感謝しろエメラン。男が結婚を決心する事とは、なかなか大変な事だからな。だが友達の君の心痛を察すれば友として何かしないわけには、いかないだろう」
キステリは溜息を付いた。
 エメランは言った。
「縁談はアステアの仕事だ、アステアに手紙を書け。だがアステアは実子のトパジアに家督を継がせる腹づもりだから。上手くは、いかんぞ」
キステリは言った。
「君も十四人も娘が居るんだエメラン。友人として二人同時に貰っても、友情の証として、おかしくはないだろう」
スカイは言った。
「十分変だよ」
 やっぱりタビヲン人はミドルン王国の常識とは、どうも違っていた。
だがスカイに構わずキステリは話し始めた。
「タビヲン王国貴族憲章八十二条によれば、汚された貴族の女は何人でも娶ることが出来る。だから汚された君の娘を二人同時に貰うことは合法であり、何等問題はない。さあ、来なさい我が花嫁達よ」
 キステリはシュラーヤと暗黒騎士に近づいていって言った。
 コロンは言った。
「……そんなこと、させない」
コロンはシュラーヤと暗黒騎士の前で、キステリに立ち塞がって両手を伸ばして開いた。
 キステリは言った。
「醜い。このレズビアンな光景は正視に耐えられん。なんと醜い光景なのだ。君の娘達は余所の国の男達に蹂躙されただけでなく、異国人の同性愛者の娘とデキていたんだな。何と嘆かわしい話だ」
 キステリは目を覆って首を振っていた。
 そして、キステリは、しなやかな一瞬の動きでコロンの前に立った。
 キステリは言った。
「いきなり水平ビンタ!」
 キステリの手がムチのように動いてコロンの横っ面を張った。
 三つ編みと帽子が吹っ飛んだ。コロンは踏みとどまった。
 キステリは言った。
 「猪口才な、レズ娘め。小娘と思って手加減すれば、まだ立つか。裁きの連続水平往復ビンタ!」
 コロンはキステリの残像を残して手がしなった超高速の連続ビンタを食らった。だがフラついたまま口の両端から血を流して立っていた。
 スカイは走りながら叫んだ。
「コロン姉ちゃん!」
 スカイは駆けていってキステリの背後から跳び蹴りを放った。
 キステリはスカイの方を見た。
「何?金髪の少年。君の姉君だったのか。全然似ていないので、赤の他人かと思っていたが。失敬、私としたことが」
 キステリはスカイの跳び蹴りを体裁きで、いなしてスカイの身体をぐるりと一回転させた。
 スカイは空中で回転して着地した。
何だ今の技は?
 エメランは言った。
「ほう、お前は、ただの剣士じゃないな。盗賊かスカウトの能力を持っているだろう。シュラーヤとトパジアは、それにやられたのか」
 キステリは言った。
「金髪の少年、このレズ娘と後ろから見ると顎の線が似ているね。確かに血は繋がっているようだ」
エメランは言った。
 「どうやら、火炎壁は途切れたようだな。集中型の呪文だったのか」
 不味い。スカイは窓の外を見た。
外の方では騎馬の軍勢が集結を開始していた。エメランが居なくても、関係は無いみたいだった。陣形は正方形に変わっていた。
 スカイは、とっさにハッタリを張った。
 「コロン姉ちゃんは、火炎魔法が得意だ。そして伝説の隕石落としの魔法を使うことが出来る」
エメランは言った。
 「確かに、その魔法使いの腕は超一流のようだが、隕石落としは、ここ数百年の間成功した者の居ない伝説の魔法だ」
 スカイはハッタリを続けた。
 「コロン姉ちゃんは出来るんだよ。二千騎の騎馬の軍勢を止めたんだ。だから、この辺一帯を吹き飛ばされたくなければ、俺達が財宝を持ったままタビヲンを出国させるんだな」
 エメランは言った。
 「追いつめられてハッタリを張っても無駄だ。財宝はタビヲン王国の物だ」
 マグギャランは言った。
 「コロンやれ、隕石落としをやってみせろ」
 コロンは呪文書を開いて万年筆で魔法の数式を書き始めた。
 エメランは言った。
「無理だ。隕石落としは成功するような魔法ではない」
 コロンは言った。
 「…出来る」
 そして、杖で床を叩いた。
 だが、何も起きなかった。
 隕石落としなど伝説も伝説の魔法だった。
スカイもコロンが出来ると言ったのはハッタリだと思った。
 エメランは言った。
「誰も成功出来ない魔法だ。だから伝説と言う。魔法の式に問題が在るのだろう。ファンブルだ」
 キステリは言った。
「それでは、我が花嫁達の…」
エメランは言った。
「いい加減にしろキステリ。今、シュラーヤとトパジアの手枷と足枷を外し自由にしてやる。鍵を渡せ冒険屋」
 エメランはスカイ達の方を向いて手を出した。
スカイは鍵の束を外しながら言った。
「ん?ああ」
スカイはエメランに手枷と足枷の鍵の束を放った。
 コロンが突然何かに気が付いた顔をして叫んだ。
 「……ダメェ!」
 そして宙を飛んでいる鍵に向かってジャンプした。
 エメランがコロンの頭を押さえるとコロンは一回転して背中から床に叩き付けられた。そしてエメランは宙を飛んでいる鍵を受け取った。