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秘密結社ドゲッサー編第一話「オレたちが仲間になったわけ」

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「どっかにでも、くくりつけて置いておけば良いだろう。おっと、そうだった。オマエ達二人の為のゲスト・ルームが地下の牢屋に用意されて居るんだったな」
 マグギャランは笑いを浮かべてスカイを見て言った。
スカイも笑った。
 「そういや、そうだったな」
 暗黒騎士が言った。
「そ、それは不味い。止めて!」
 シュラーヤも言った。
「そうです、お願いです、ここに置き去りに、しないでください。しかも牢屋に、なんか入れないでください」
 スカイは言った。
「別に良いだろう。手足が辛うじて動けるんだから昨日の俺達より遙かにマシな扱いだろう。殴ってもいないし、蹴っても居ないし?椅子も投げていないじゃないか」
 暗黒騎士が言った。
「そんなこと、女の子にする奴、最低か変態よ」
 スカイは言った。
「男にしたって、最低か最悪だよ」
 暗黒騎士が言った。
「ねえ、お茶でも飲んでいかない」
 シュラーヤが言った。
「そうです。ミシュカ姉様が持たせてくれた日持ちする低カロリーのケーキが在るのです。それを、御茶請けにして、一休みしてから、ご出立を為されては、どうでしょうか」
シュラーヤが笑顔で首を傾げて言った。
ルシルスに、その仕草が、よく似ていた。
 だからスカイは信用しなかった。
 スカイは言った。
「何、引き留めて居るんだよ。そんな時間ねえよ。それに、オマエ達と仲良く飲む茶なんか何処にもねぇよ。これから、俺達は宝を持ってタビヲンを脱出しなくては、ならないんだよ」
マグギャランは言った。
「ああ、そうだ。まだ、国境まで遠いからな。追われる立場となる以上、水や食料の確保を、どうやってやるかも問題だ。オマエ達に俺達の逃走ルートを教えるわけには、いかない。スカイ、俺に任せろ。この地図は軍事目的で作られている詳しい地図だ。小径や地形の問題も書き込まれている。この地図さえ在れば、移動は楽だ」
 マグギャランはタビヲンの地図を見ながら言った。
 スカイは言った。
「牢屋で決めたとおり、マグギャランとコロン姉ちゃんが馬に乗って、俺が宝箱と一緒に、もう一頭の馬に乗って、お前が手綱を引っ張っていく」
マグギャランは言った。
 「ああ、それで良い。お互いに宝を持ち逃げする心配が無いからな。よし、タビヲンを脱出するまで休戦だ」
スカイは頷いた。
「おう」
 スカイとマグギャランは手を打ち合わせて拳骨をぶつけた。
スカイとマグギャランは宝箱に向かって歩いていった。
「何だ、この音は?」
 スカイは馬が大量に走るような音を聞いた。
 マグギャランは狼狽した声で言った。
 「スカイ!これは蹄鉄が地面を叩く音だ!そして、この音の数は、騎馬の軍勢が迫ってくる音だ!」
暗黒騎士が急に笑い声を上げて言った。
「ははははははは!そうだ!ようやく気が付いたようだな。タビヲン王国三将軍の一人、我が父、ヨーアック・クトイハ侯爵が率いる「超ケダモノ」軍団の精鋭二千騎が、この詰め所に迫っている。オマエ達は、もはや逃げることはできんぞ!」
 スカイは言った。
「二千騎の騎馬の軍勢か、ちょっとばかり数が多すぎねぇか」
 スカイは、うろたえた。
 マグギャランはコロンに叫んだ。
「コロン!魔法使いは戦場では、兵士を攻撃魔法で薙ぎ払う役目を持っている。お前も、得意の火炎球で騎馬の軍勢を吹き飛ばせ!」
 コロンは言った。
 「……出来ない」
 マグギャランは言った。
「俺達が殺されるんだぞ!やれ!コロン!お前の火炎球は威力は高いんだ!そして、お前は、普通の魔法使いより魔法を撃てる回数が多いことを知っているぞ!」
コロンは首を振って言った。
「……人殺しは出来ない」
マグギャランが強く言った。
「コロン!この期に及んで何を言っている」
マグギャランの声に怒気が加わった。
 暗黒騎士が言った。
 「道理で、というわけだ、なんでオマエ達みたいな冒険屋のパーティで、コロンが、くすぶっているのか判ったよ。人を殺せない魔法使いじゃ。幾ら魔法の腕が高くても軍隊や、宮廷に入ることは出来ないからな」
暗黒騎士が嫌みったらしい顔をした。
 シュラーヤは言った。
「成る程ね」
 シュラーヤが笑みを浮かべていた。それは酷く醜く見える嫌な笑い方だった。
 これが、この女の本性なのか。
 スカイは思った。
 スカイの視線に気が付いた途端にシュラーヤは顔が清楚な顔に変わった。
 スカイは納得した。
 リバーシブルと言う訳か。
 コロンは言った。
 「……でも、軍勢は止めることは出来る」
マグギャランは言った。
「何?止めるだと?どういうことだコロン」
暗黒騎士がバカにした声で言った。
「一人の人間に、たとえそれがどんなに優れた魔法使いでも二千騎の「超ケダモノ軍団」軍勢を止めることなど、できっこない。まさかホラ話の隕石落としでも、やってみせるというのかコロン」
 どうやらコロンの前で出していた優しい声が引っ込んで暗黒騎士の本性が出てきたようだった。
コロンは宝箱の中から、小箱を1つ取りだした。そして中身を取りだした。
「……これは法丸石」
 コロンは、丸い宝玉を取りだした。
 それはミレルが言っていた。魔法のエネルギーが大量に詰まっているエナジー・ストーンだった。ミレルの説明では放っておくと使っても充電を超急速で自動的にしてくれる便利な物らしい。
コロンは魔法の呪文書を空中に浮かべた。
 そしてエナジー・ストーンを左手に持った。
そして杖の柄で床を叩いた。その瞬間、窓の外に高さが十メートルぐらいの炎の壁が出来上がった。そしてナラシダ街道を走って、こっちに向かってくる騎馬の軍勢に向かって炎の壁が走っていった。だが、幅は三十メートルぐらいしかない。確かに二列縦隊を組んでいる騎馬の軍勢の隊列を止める事はできるかもしれないが、それだけではだめだ。ナラシダ街道の回りは荒れ地になっている。馬が入っていける地形だ。広がられたら火炎壁を迂回される。
 暗黒騎士が嘲笑うような顔をして言った。
 「ファイアー・ウォール?その程度の火炎壁で騎馬の軍勢を止めることなど出来ない。騎馬の軍隊は散開して、この詰め所に到達する。タビヲンの男爵以上の爵位を持った剣士達を、オマエ達三人で防げる筈はない」
 暗黒騎士の言うとおり、騎馬の軍勢は散開を始めた。
 コロンは杖を上に掲げた。そして思いっきり振り下ろした。その瞬間、火炎壁は急激に横に広がり始めた。
 騎馬の軍勢が慌てて、向きを変えて、側面に回り込もうとするが、火炎壁の方が早く、荒れ地を伸びていった。
そして広がった騎馬の軍勢はバラバラになって火炎壁の前で止まった。
 暗黒騎士がコロンを見た。
 暗黒騎士は言った。
 「まさか本当に軍勢を止めた!たった一人の魔法使いが!」
マグギャランは叫んだ。
 「コロン、その火炎壁で軍勢を焼き殺せ!奴等が浮き足立っている今はチャンスだ!馬より早く、火炎壁を広げることが出来るなら簡単に焼き殺せるだろう!」
 コロンは首を振って言った。
「……人殺しは出来ない」