秘密結社ドゲッサー編第一話「オレたちが仲間になったわけ」
マグギャランは言った。
「それじゃ、一丁やるか」
マグギャランが笑いながら鉄で出てきた錆びた閂を見た。
スカイが頷いた。
そして抜き足差しでスカイは閂を持ってきた。そして閂を扉に掛けた。
スカイとマグギャランは顔を見合わせて声を立てずに笑った。
マグギャランが抜き足差し足で、ゆっくりと音を立てずに近づいてきた。
そして、4つある扉全てに閂を掛けた。
スカイとマグギャランは顔を見合わせて声を立てずに笑った。そしてマグギャランは二階を指さした。スカイとマグギャランは首に手錠と足錠を巻き付けて、音を立てずにソロリ、ソロリと昇っていった。
そしてスカイ達は昨日尋問された部屋の前に来た。
開けようとしたら鍵が掛かっていた。
マグギャランはスカイに顎で促した。
スカイは針金で鍵を開けた。
そしてスカイ達は昨日尋問された部屋に入っていった。
中は真っ暗だったが夜明けの暁の曙光が、微かにコロンが火球であけた天井の穴と鉄格子の掛かった窓から入ってきていた。
部屋の中は昨日尋問されたときのままだった。宝箱の中の十五億ネッカー(150兆円)の財宝は散らかったままだったし、シュラーヤがマグギャランに投げた椅子も転がったままだった。そしてスカイ達の剣、「黒炎刻」と「斬魔剣パラデイン」もテーブルに載っかったままだった。
スカイとマグギャランは、それぞれ自分の剣を取って腰に巻いた。そしてスカイは愛用のナイフを腰に、ぶら下げた。
スカイは小声で言った。
「やっぱりコイツが腰に無いと勝手が違うよな」
黒炎刻を触りながら言った。
おおっ、イイ感じだ。
マグギャランも小声で言った。
「聖剣「斬魔剣パラデイン」を持つ選ばれし騎士の中の騎士である、この俺には、やっぱりこの剣が無くてはならん」
そして二人で顔を見合わせて笑った。
「何が、そんなに、おかしい」
スカイ達の背後から女の声がした。
膝まで在る丈の革のコートに革のズボンを履いた暗黒騎士が腕組みをして剣を右手に持って立っていた。
コロンとシュラーヤも暗黒騎士の背後に居るが二人とも眠そうな顔をしている。コロンは欠伸をしながら青いコートのボタンを留めていた。シュラーヤはフリルの沢山付いた肘まである白いブラウスに灰色と黒のベストを着て白いスカートを履いて片手に曲刀を鞘ごと持って目元を、こすっていた。
マグギャランが狼狽した声で言った。
「何!どうやって気が付いた」
暗黒騎士は言った。
「わたしは生まれつき地獄耳なんだよ。隣の部屋で寝ていたらゴソゴソとネズミが這うような音がしていると思ったら、とんでもない大ネズミだったようだな」
スカイは怒鳴った。
「うるせぇ!これは俺達がドラゴンのミレルから貰った財宝だ!テメェ等には、びた一文やる気はねぇ!」
マグギャランは言った。
「そうだ!これは俺達の財宝だ!」
シュラーヤは言った。
「ですが、私達も父上の命令で、この財宝を死守しなければならないのです。一命にかえてもです」
言っている内に眠そうだったシュラーヤの顔が引き締まっていった。
暗黒騎士は言った。
「そう言うことだ」
暗黒騎士が持っていた剣の鞘を払って投げ捨てた。
コロンがキョロキョロとして困った顔をしている。
スカイは叫んだ。
「コロン姉ちゃん!コイツラは敵だ!俺達がミレルから貰った財宝を横取りしようとしている、とんでも無い奴等だ!」
だが、コロンの手には魔法の呪文書しかなかった。杖は無かった。
シュラーヤが言った。
「良いことを教えて差し上げましょう。私はバラン流大カミソリ術の使い手です。あなたが3本剣止まりの腕なら私には決して敵いませんよ騎士の方」
シュラーヤはマグギャランをバカにした顔で、大カミソリの鞘を払って捨てた。
マグギャランが「斬魔剣」を抜いて言った。
「スカイ。シュラーヤは俺が倒す」
そしてマグギャランは首に掛けていた手枷と足枷を投げ捨てた。
スカイは言った。
「そんなら、暗黒騎士は俺が相手をする」
スカイは腰の黒炎刻を抜いた。そして手枷と足枷を投げ捨てた。
シュラーヤは言った。
「バラン流の剣技は、知っているかも知れませんが闇剣という見えない剣を使います。ラメゲ・ボルコ程度の腕の剣士と私を一緒にしない方がよろしいですわ。私は「カミソリ夫人」と呼ばれたバラン流前宗家であったタギャクイ伯爵家出身の亡き母の全伝を高弟達から受け継ぐ現在の宗家」
シュラーヤは大カミソリ剣を構えた。
マグギャランは言った。
「ふっ、宗家が相手とは手間が省けるな、俺はラメゲに敗れてから、バラン流の闇剣術を破る秘策を考え続けていた。お前を倒せば、俺は、ラメゲの背中に一歩近づけるわけだ」
マグギャランは、「斬魔剣」を斜め上段に背中に担ぐように構えた。
シュラーヤは言った。
「ラメゲ・ボルコは、そのような立派な男ではない。バラン流を使えば、私より弱い格下の使い手だ。ただの万年男爵の長男でしかない」
マグギャランは言った。
「ならば、剣に聞けば判る。お前の剣の腕を見せて見ろシュラーヤ。バラン流が突き返して切るカウンター攻撃を得意とすることは判っているのだ。俺のユニコーン流が突き技を得意とする以上、最初からカモにされるのは至極明白な話だった。だから突かずに振り下ろすのだ」
シュラーヤは言った。
「笑止!それで、上段に構えたのか。バラン流の闇剣は突き返しだけだと思うか?否!バラン流は上段から振り下ろそうと闇剣を掛ける事が出来る。無限切りで切り刻んでくれる」
スカイは暗黒騎士に言った。
「おい、お前も、何か、ワケの判らない剣の流派とかいうモノに付いて剣の振り方を覚えたのかよ」
暗黒騎士はバカにした顔でスカイを見た。
「私の家は、剣と魔法の天才のタビヲン貴族の家系だぞ。流派など必要ない。「獣」軍団の将軍になる家系だ。父親は「超ケダモノ」軍団の現将軍で、従兄弟は黒竜王時代に「魔獣」軍団を率いていた。誰かに付いて習う必要なんかは無いんだよ。努力もしなくていいし、生まれつき強いのだ。他人が、やっているのを、ちょっと見れば十分なんだよ。それで、苦労して、エッチラ、オッチラと無駄な時間を使ってやっている奴より何でも上手くできるのだ。ドラゴンやライオンや虎がトレーニングをしないように天才は生まれつき強いから努力なんかしなくてもいいのだ。真の強者とは努力をしないモノだ」
暗黒騎士が腰から剣を抜いて顎を上げてツンとした顔で言った。どう見ても悪女顔の女だった。
スカイは言った。
「俺は、誰かに剣の振り方は習いはしないが、努力はしている。強くなくちゃ生きていけないからな」
スカイは黒炎刻を両手で握りながら言った。
剣の柄を握っているだけ幸せになってくる。これで剣を振り出したら楽しさの余り死んでしまうかも知れないような、底知れぬ心地よさが全身に走ってきた。これが黒炎刻という剣なのか。戦いの中で握ると、頼もしさが全身を駆け抜けた。こんな事は今まで一度も経験したことがなかった。
コイツは俺の剣だ。
名前は黒炎刻。
作品名:秘密結社ドゲッサー編第一話「オレたちが仲間になったわけ」 作家名:針屋忠道