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秘密結社ドゲッサー編第一話「オレたちが仲間になったわけ」

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 暗黒騎士が震える声で言った。
「オマエ達、本当にドラゴンから宝を貰ったようだな。この指輪を填めた途端にシュラ姉から吹き出るようなカリスマを感じる。こんな宝物、初めて見た」
まあ、いい、「暴君の指輪」以外の、お宝の価値には気が付いていないようだ。ミレルから、お宝の使い方の説明を受けたスカイとマグギャラン以外は、お宝の価値も使い方も判らないようだ。ただの高価な財宝とでも思っているのだろう。コロンは財宝の価値や使い方を知らないようだし、これでいいようだ。読めたぜ、マグギャラン。幾つかの、アイテムに気を引かせて油断させてから取り返せばいいと言うことか。
 スカイはマグギャランの方を向いた。
だが、マグギャランは、しまったと言うような顔をしていた。
 おい、お前には取り返す計画が無かったのかよ!
くそっ、こうなったら、俺一人でも宝を全部取り返してやる。
 暗黒騎士が震える声で言った。
「おや、この箱の下には封筒が入っている。封蝋の紋章は、やっぱりドラゴンだ」
 「読んで」
 シュラーヤが右手に填めた「暴君の指輪」を、うっとりした目で見ながら言った。
暗黒騎士が封筒を開けた。
暗黒騎士が読み上げた。
 「うん。えーとね。これはトレーダー語かな。「親愛なるスカイさん、マグギャランさん、コロンさんへ。この財宝さえ在れば、人間界ではブイブイ言わせて、やりたい放題の事が出来ます。国を興すのも滅ぼすのも自由自在です、どうか三人でケンカしないで仲良く使って下さいね。人間を愛する、あなた達の心の友ミレルより」だって。内容は最低の事が書いてあるけれど結構達筆だね。タビヲンのロシコ文字の筆記体に少し似ているかな」
シュラーヤが「暴君の指輪」を外して箱に戻して言った。
 「もう一枚は何が書いてあるの」
 暗黒騎士が読み上げた。
 「品質保証書だって。財宝の名前リストと換金した場合の推定時価総額と書いてある。数字の合計金額は……」
 は?そんな物が在ったのか!
 スカイは狼狽した。
ミレル!余計な、お節介をしやがって!
 暗黒騎士が叫んだ。
「十五億ネッカー!(現在の日本円で約150兆円相当)」
 シュラーヤが驚いた声を出した。
「本当なの!」
 暗黒騎士がコロンの背中を叩いた。
 「コロンすごいよ!十五億ネッカー(150兆円)もする財宝を貰ったんだよ!」
コロンがフラーっと立ち上がった。
 そして両腕を広げた。
 コロンの頭上に直径2メートル近くの巨大な火球が出来上がった。いや、正確には火球の下半分しか見えなかったが。
 暗黒騎士が言った。
「どうしたのコロン?」
スカイは叫んだ。
 「上だ!上を見ろ!コロンがカネに目がくらんだんだ!俺達を消す気だ!炎の魔法で俺達全員を消して殺してカネを独り占めにしようと企んでいる!ゼッテーそうだ!」
シュラーヤが言った。
「コロンの魔法発動体は杖のはず。何で、発動体無しで魔法が使えるの」
 暗黒騎士が言った。
「変だ。何で、火球が天井に触れているのに爆発しないんだ。攻撃魔法は、物体に触れるとエネルギーが解放される筈だ」
そういや、コロン姉ちゃんの魔法は、普通の魔法使いと全然違うんだよな。威力がショボかったり、妙に強力だったりムラがすごいあるんだよな。
 スカイはコロンに叫んだ。
「いい加減目を覚ませコロン!フレイア先生が見ているぞ!」
フレイア先生はコロンが付いている魔法の先生だった。
 コロンは言った。
 「……え」
 コロンが辺りを見回した。
 天井に出来ていた火の玉が急速に縮んでいった。
 暗黒騎士が驚いた声で言った。
 「一度出した、攻撃魔法が消えた?魔法の呪文は不可逆変化なのに。出したら消すことは出来ない」
コロンは言った。
 「……先生どこ」
 コロンは首を、すくめて辺りを見回した。
スカイは言った。
 「どうやら正気に戻ったようだな」
厳しい顔のシュラーヤが暗黒騎士の袖を引っ張って、天井を指さした。
 天井には丸い穴が開いて夜空には欠けた月が見えていた。
 暗黒騎士の顔が強ばった。
そしてコロンを、じっと見ていた。

そして地下の鉄格子の付いた牢屋にスカイとマグギャランは放り込まれた。手枷と足枷は付けられたままだったが。身体をグルグル巻きにしていた鎖は、モヒカンの兵士によって外されていた。
 スカイは牢屋の中で叫んだ。
 「オイ!なんでコロン姉ちゃんだけ、普通の扱いなんだよ!」
 暗黒騎士は巨大ヘルメットを被ったまま言った。
 「コロンは友達になったんだ」
 シュラーヤが言った。
 「さあ、あちらで、お茶でも飲みましょうコロンさん。色々と聞きたい話も在ります。コモンの国々の話などをしては頂けないでしょうか」
赤いヘルメットを被ったシュラーヤがコロンの両肩を叩いて(笑顔の様な声で)言った。
 スカイは叫んだ。
「コロン姉ちゃんも何、騙されて裏切って居るんだよ!」
 コロンは困った顔をしてシュラーヤと暗黒騎士に背中を押されて連れて行かれた。

 スカイは、マグギャランに目で合図をしながら言った。
「おい、何で、宝箱を開けさせた」
隣の牢屋のマグギャランが近づいてきた。
マグギャランは小声で言った。
 「とにかく、蹴飛ばされたりして出来た身体の傷の回復が優先だ。それに、俺達はグルグル巻きに鎖で縛られていた、今は鎖が外されている。状況は若干好転している。コロンはスカイがスカウトだった事を、よく知らないみたいだろう」
スカイは言った。
 「まあな」
 スカイは手枷を付けられたまま、足枷を付けられたブーツに仕込んだ針金を取りだした。
マグギャランは、もっともらしい口調で言った。
「お前の特技を隠しておくことは、この状況を打破する、最大のチャンスを呼び込む事に繋がる」
スカイは言った。
 「仕方ねえな。俺は、もうスカウトじゃねぇんだぞ」
 スカイは針金を足枷の錠前に入れた。
スカイは暗黒騎士が腰に、ぶら下げている鍵の束の形を覚えていた。そんなに複雑な鍵は使ってはいなかった。案の定直ぐに足枷の鍵は開いた。
マグギャランは言った。
「後は、馬を奪って、逃げることを考えれば良い。馬は二頭しか居ない事は確認済みだ。徒歩では馬には付いてくる事は出来ない」
スカイは言った。
「だが、見張りが厄介だぞ。それに、あのバカ女達が連れていた兵士の数は九人だ」
 マグギャランは言った。
 「この詰め所に居る人数は、どの程度居るかが問題だな」
 スカイは言った。
「いや、挨拶に出ていた数の四人が上限だと見るべきだ」
 マグギャランは言った。
 「そうだな。侯爵の娘達ともなれば、全員が出迎えるとみるのが当然だ」
スカイは言った。
 「それなら、奴等の数は十三人の兵士プラス、バカ女二人の十五人だ」
 マグギャランは言った。
 「まあ、剣が一本在れば、今の俺では殺せない数ではないな。今の俺は触れると弾ける危険なキリング・マシーンだ」
 スカイは言った。
「殺すのは止めておこうぜ」
 マグギャランは言った。