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表裏の真実

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 インターネット最盛期のこの時代に、調べられないことの方が少ないと思っていたが、実際にはあれだけの意外な表情だったということで、頭から信じていたことは、少々の情報が入ったとしても、その思いが揺らぐことはないという証拠なのかも知れない。
 この時点で岡本はまだ松山の存在を知らない。ただ、由梨の中に、心に残っている誰かがいることは分かっていた。それが男性なのか女性なのかも分からない。大きな影響を与えているということだけは感じていた。
 その相手がまさか死んでいようとは……。そして、今回の取材の目的の中に、その人物の影が潜んでいようとは、その時の岡本は知る由もなかった。
 文香は続けた。
「おちろん、以前から事故多発であったことには違いないんですが、他にも事故が多発するところが多くて、ここが目立たないほどだったんです。でも、他のところは時代が進むにつれて道も整備されていき、着実に事故もなくなっていきました。でも、ここだけは道を整備しても事故はなくならなかったんです」
「どうしてなんですか?」
「一つは、この道の構造上の問題なんじゃないかと思うんです。直角近く曲がっている道路など、そうなかなかありませんからね。普通なら皆徐行して走るんでしょうが、中には徐行しない人もいる」
「それは、この道の特性を知らない、つまり、この土地の人間ではない人が、徐行もせずに走り切ろうとして事故に遭うということでしょうか?」
「そういうケースもないとは言えませんが、こんな奥地まで来る人は、たいてい地元の人間しかいませんからね。特性を知らないということはないと思いますよ」
「じゃあ、どうしてなんでしょう?」
「一つには幽霊説があるんですよ。この土地はダム湖に近いですからね。ダムの奥に沈んだ村の鎮守様が、お怒りになったという説ですね。ここで事故に遭われた方で比較的軽傷だった人に話を聞くと、普通に徐行していたつもりだったんだけど、何か白いものが見えて、そこに吸い寄せられるように急に感覚がマヒしたというんです。危ないと思った瞬間には、すでに遅かったというんですね」
「なるほど、その人は徐行していたので、軽傷で済んだんでしょうね。スピードを出していれば、ガードレールを突き破って、池に転落していたでしょうからね」
「以前、こんなこともありました。事故が起こる瞬間を対向車として向こうから見ていた人がいて、車がガードレールを突き破って、池に落ちたらしいので、急いで警察と消防に連絡したんです。それから、警察と消防で、池を攫ったらしいんですが、落ちたはずの車がどこを探しても見つからなかったらしいんですよ」
「見間違いか何かではなかったんですか?」
「それはないと思います。実際に前の日までは綺麗だったガードレールが突き破られていたからですね」
「何かがあったことには違いないんだけど、その証拠が見つからないというわけですね?」
「そういうことになります。それ以来、交通事故多発地帯として有名になり、警察もこのあたりの警備には目を光らせているという次第です。でも、実際に事故は減らないし、その後も『白いものを見た』という証言が何件か出てきて、いよいよ街の七不思議のひとつになってしまったんです」
 由梨はその話を聞きながら、何かゾクゾクしたものを感じていた。霊感が特別強いわけでもないが、怖い話は苦手な由梨だったが、このゾクゾク感は、怖い話に対してのものではなかった。
――何にこんなに不気味に感じるのだろう?
 先ほど事故に遭われた方の遺品として見せてもらったものが気になっていた。
 そもそも、なぜこの人が事故に遭った人の遺品を持っているのかというのも不思議な気がした。遺品というのは、事故に遭った人の家族に返すのが当たり前のことで、もし、親類がいなかったり、身元不明の死体だったりすれば、荼毘に伏された被害者と一緒に葬られるのが当たり前のことのように思えたからだ。
「文香さん」
 由梨は、岡本との話が途切れるのを待って、文香に声を掛けた。
「はい、何でしょう?」
 文香も急に由梨の方から名前を呼ばれて、思わず身構えてしまった。
 相手が男か女かで対応を変えるのか、それとも、由梨に対して、最初から何かしら警戒心を持っていたのか、すぐには分からなかった。
「文香さんは、先ほど事故に遭われた方の遺品を持っておられましたけど、どうして文香さんのところにそれがあるんですか? 事故に遭われた方の親類か誰かに渡されるものではないんですか?」
「実は、先ほど話したように、ガードレールを突き破って事故を起こした車がどこにも見つからなかったと言いましたでしょう? 同じことが、二年前にも起こったんです。その時、私も事故を目撃していたんですよ。事故が起こる一時間ほど前に、ちょうどガードレールが突き破られた近くに、この時計が落ちていたんですよね。警察がいくら探しても車は見つからない。警察も諦めて、一旦撤収したんですが、数日後、湖底を攫った時には見えなかったはずの車が、急に浮かんできたんです。しかも、その中の人は白骨化していて、とても、ここ数日で死んだ人には見えなかった。そこで、警察が調べると、十年以上前にも同じことがあって、車が見つからなかったのが分かったんです。そして、白骨化した死体を復元してみると、やはり十年以上前に捜索願いが出ていた人だったんですよ」
「本当に怖くなってきました」
 と由梨がいうと、文香は、
「ここまで話したのだから、最後まで聞いていただけますか?」
 というので、由梨も、
「分かりました」
 と答える他はなかった。
 文香は続ける。
「その時の状況は、まるで十年前の事故を探ってみると、まるでタイムスリップしたかのように、ピタリと状況が嵌ったんです。それを聞いて、私も腕時計を見に行くと、発見した時には新品だったはずの時計が、かなり錆びついていて、針も動いていませんでしたまるで水に濡れてかなり経っているかのような感じだったんですよ」
「でも、先ほど見せていただいた時計は、そこまで酷いものには見えませんでしたけど?」
「ええ、それからしばらくして、今回の事故の捜査は打ち切られたんですが、これまた事故が起こってから半年くらいして、急に池に車が浮かび上がってきた。車の中の人はまだ白骨化しておらず、腐敗はひどかったんですが、身元も何とか復元するまでもなく分かったようです。ただ、その人がこの街の有力者の息子だったことで、警察にもかん口令が敷かれました。とはいっても、マスコミの目はさすがに騙せず、すぐに話題にはなりましたが、問題は発見されたのが誰なのかということよりも、どうして半年近くも池の中にあったものが発見されなかったのかということでした」
「じゃあ、過去の事故も話題に?」
「ええ、一時期、反響もあったようなんですが、しょせんは交通事故、しかも、事故多発地帯ということもあって、全国にはよくある七不思議のひとつのように言われるようになって、急に世間の目は冷めてきました。話題性から、オカルトに変わってしまったことで、ウワサも萎んでいきました。今ではオカルトやホラーを研究している人しか、興味を持っている人はいませんよ」
作品名:表裏の真実 作家名:森本晃次