こころのこえ 探偵奇談13
そう言って、祖父は莉子の髪を優しく撫でた。屈みこんで視線を合わせて。
「これでもう怖いことは起きないからね」
祖父は懐から取り出したキャンディを数個、莉子に握らせて笑った。
「ありがとう、おじちゃん!」
莉子も笑った。それは心から満足したような笑みだった。
「莉子、ごめんな…ごめんな…」
「嫌だったよね、つらかったよね…ごめんね…」
両親が莉子を抱きしめるのを見て、二人は莉子の家から出る。
「じーちゃん、お見事でした!」
颯馬が拍手をすると、祖父は被っていた兜巾(ときん)を外し、息を吐いた。
「他者が両親を叱ったことで、あの子の溜飲も下がっただろう。両親が後悔する姿を見て、自分がきちんと愛されているということも理解できたはずだ。親が変われば、あの子の不安も消えて、やがて落ち着いていくだろう」
先に帰るぞ。そう言い残し、祖父は去っていく。が、途中で振り返るとニイと笑って見せた。
「こんな詐欺師の役は二度とごめんだが、おまえとおまえの友人は、一ついいことをしたな」
そう言って颯爽と歩いていく祖父の背に、颯馬はひとつ頭を下げた。
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作品名:こころのこえ 探偵奇談13 作家名:ひなた眞白