こころのこえ 探偵奇談13
「このままでは娘さんに障りが出る」
その一言に、両親は恐慌をきたした。
「そんな!どうか助けて下さい!」
「この子だけは!どうしたらいいですか!」
母親は莉子を抱きかかえる。普通ならこんな話、アヤシイと一蹴して終わるだろう。だが、この一家はいまや、わらにもすがる思いなのだ。それほどの状況に置かれている。言い方は悪いが、そこにつけこめば信用させることは容易い。
「邪気を払う必要がある。わたしにお任せ下さい。お代等は結構。すぐに終わります」
祖父はそのまま導かれて家の中に入っていった。玄関に残された颯馬はぽかんとしている莉子に目を合わせ、笑ってみせた。
「今までよく頑張ったね。もう、大丈夫だよ」
「…え?」
「って、瑞くんから伝言」
「瑞?瑞が?」
「そう。瑞くんはきみを助けるって約束したんでしょ?もう何も心配しなくていいからね」
ほんとう?そう呟いて涙をためている莉子の手を引き、颯馬は頷いてみせた。
祖父はリビングの床に両親と莉子を座らせた。
「じいちゃん、瑞くんから伝言」
「なんだ」
「なるべく派手に。莉子ちゃんにも理解できるようにお願いしますって」
ふん、と祖父は鼻を鳴らした。そして目を閉じたかと思うと。
作品名:こころのこえ 探偵奇談13 作家名:ひなた眞白