こころのこえ 探偵奇談13
プラシーボ
三日後。まだちらちらと雪が降っている夕刻。郁は颯馬に呼ばれて公園にいた。伊吹と瑞も一緒だ。ポルターガイストの原因がわかったのだという。颯馬のもたらした情報がヒントになったらしい。他言無用に首を突っ込んだことを颯馬は詫びてくれたが、郁にしたらありがたい話だった。莉子の悲しみを、終わらせられるのなら。
「あの現象は、莉子ちゃんがやってるんだ」
瑞から改めてその話を聴き、郁は小さな莉子の悲しさを思って胸がつぶれそうだった。
「そんなことがあるなんて…」
無意識の底で、気づいてほしい寂しさと悲しさを抱えていた少女。昨日経験した壮絶なあの現象。あれが莉子の心の叫びなのだと言われれば、怖さはもうなく、ただ彼女を哀れに思うのだった。
「それでね、今日莉子ちゃんのパパとママ、帰ってるって言ってたよね?」
「うん…莉子ちゃんもおうちに戻ったよ。でも…」
きっと現象は収まらないのだ。莉子の悲しさを取り除かない限りは。
「それで俺のじいちゃんに一芝居打ってもらうことになったから」
「え?颯馬くんのおじいちゃん?」
伊吹を見ると、彼は頷く。
「話を聞いたんだが、うまくいきそうなんだ。そろそろ颯馬のじいちゃんが莉子ちゃんちに着くころだ」
莉子の家に?一体何をしに行くというのだろう。
「俺はその手伝いに行ってくるから。詳しい話は伊吹先輩に聞いといて」
そう言って颯馬は踵を返す。
「颯馬くん。ありがとう。ごめんね、巻き込んじゃって」
いろんなひとの力を借りることになってしまった。颯馬は振り返ってキョトンとしていたが、やがてぱっと明るく笑った。
作品名:こころのこえ 探偵奇談13 作家名:ひなた眞白