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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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こころのこえ 探偵奇談13

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「いい考えって、何だろう」

伊吹が言って、瑞の向かいのソファに腰掛ける。なんだか急に方の力が抜けて、瑞はソファに身を沈めて長く息を吐いた。

「大丈夫か?痛む?」
「大丈夫です…ちょっと疲れちゃって」
「なんか飲むか」

立ち上がった伊吹が牛乳を沸かして、ココアを作っている。疲れているのは調査のせいではなく、瑞の胸にもやもやと渦巻く霧のような重苦しさのせいだろう。郁を抱きしめたときの、あの感じ。

「ほら飲め」
「…いただきます。あの、先輩」
「なんだよ」

ココアをすすりながら天気予報にチャンネルを合わせテレビに向かう伊吹に、瑞は思い切って尋ねてみる。

「一之瀬って、最近へんですよね?」
「は?」

ぽかんとした表情が返ってくる。

「へんって、どうへんなんだよ」
「…んと、なんか急に」

綺麗になったと思いませんか、なんていうのは気恥ずかしくて、瑞は言葉を飲み込む。なんといえばいいのだろう。彼女の変化に胸騒ぎのような焦りを覚えてしまうのは、自分だけなのだろうか。沈黙した瑞の様子を訝しみ、伊吹はテレビを切って向き直る。

「一之瀬と何かあったのか?」
「…あの、あいつって好きなひととか、いますよね」
「どどどどうだろうな。みみみ宮川主将のコトは大好きみたいだけど」
「先輩ココア零れてるよ」

心なしか、伊吹の声が上ずっているような。

「宮川主将のこと、今はもう違うミタイなんです」
「ふ、ふーん」
「俺、聞いたんですよ。一之瀬の好きなひとって誰って」
「まじで!?聞いたの!?あいつ何て!?」
「…それが、言わないって…」

教えてくれなかったのだ。そのあとその話題に触れさせないとでもいうかのように、冷たい流水でざんざん腕を冷却されたのだった。