こころのこえ 探偵奇談13
「斎藤が言うには、ポルターガイストを起こす犯人は、映画の中では大体女性だそうだ。それもストレスを抱えた少女が多いって」
ストレス…。瑞は思い出す。莉子との公園での会話。引っ越しをして、莉子の環境は大きく変わった。転校、祖母との離別、忙しくなった父の仕事、それによる両親の確執…。
「…すごいストレス抱えてると思います、あの子」
犯人。無意識に起こす力の発露。さっきは、莉子の悲鳴に応えるように、現象は激しさを増していた。瑞の話に、伊吹が静かに紡ぐ。
「莉子ちゃんの苦しみが、悲鳴が、無意識に訴えてるのかな。助けて、気づいてって」
そうなのだろう、きっと。幼い子の声にならない言葉を、苦しさを、まるで両親に気づかせるかのように。物を壊し、音を鳴らすことで、莉子はつらさを訴えているのだろう。そうしてやろうという気持ちはなくても、無意識にやってしまう。そういうものらしい。
「ポルターガイストは起こしている子自身が一番被害をこうむるらしいよ」
「莉子ちゃん自身も、怖い思いや痛い思いをしている。やっぱりあの子が…」
かわいそうに。まだ、あんなに小さいのに。感情が、言葉や態度ではなく別の形で爆発しているのだ。
「どうやったら、止められるんだろう」
瑞が言うと、伊吹は難しい顔をして言った。
「あの子のストレスを失くしてやれば…でもしれは、引っ越す前の環境に戻す必要があるから難しいのか」
それならおまかせ、とにこやかに笑ったのは颯馬だ。深刻な雰囲気を吹き飛ばすような笑顔に、瑞と伊吹は同時に「え?」と声をあげた。
「いい考えがあるよ。じいちゃんに頼んでみる」
彼はそう言うと、スマホを片手に部屋を出ていく。天狗神社の神主で、眼光鋭いあのじいちゃんに何か頼むというのだろうか?
作品名:こころのこえ 探偵奇談13 作家名:ひなた眞白