こころのこえ 探偵奇談13
痛みは見えない聞こえない
莉子の家をあとにした瑞は、伊吹の家へ向かう。あの後、すぐに伊吹から連絡が入ったのだ。
以前訪れたことのある伊吹の家は、バス停から歩いてすぐだった。チャイムを鳴らすと伊吹が出てきて、怪我したのかと驚かれる。
「大丈夫です」
頬の傷は大したこともなく、莉子に大きな絆創膏を貼ってもらった。右の上腕はシップを貼ってある。郁が水と保冷剤でしっかり冷却してくれたおかげか、またじんわりとした痛みが残っているが、動かすと痛み程度で済んだことは幸いだった。
それでも事情を聴いた伊吹はだいぶ肝を冷やしたようだった。腕を見せろと怖い顔で言われ、包帯をきつく巻かれる。リビングには颯馬もおり、手当を受けながら莉子の家で起こったことを話す瑞を、じっと見つめていた。
「それで莉子ちゃんと一之瀬は?」
「帰しました。二人ともとりあえず落ち着いたので…」
取り乱していた郁のことを考える。家まで送るときにはもういつもの郁だった。しかし大泣きしたことが恥ずかしかったのか、瑞にたいしてはばつの悪そうな雰囲気であったが。
「それで、幽霊はいたのか?」
伊吹に問われ、瑞は首を振る。そんな気配は感じなかった。
「だとしたら、原因はやっぱ莉子ちゃんでしょ」
颯馬が口を開く。
「ポルターガイストの原因は、抑圧された人間のストレスによるもの。念力というのか、そういったものが起こしていたという事例が多くあるんだって」
その可能性に思い当たった颯馬と伊吹は、映画同好会の斎藤のものに出向き、ずばりその質問をしてみたのだという。様々な映画を数多く見続けている彼は、そのようなテーマを題材にしたものも観たことがあるようで、詳しい話をしてくれた。
作品名:こころのこえ 探偵奇談13 作家名:ひなた眞白