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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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こころのこえ 探偵奇談13

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怪我をした瑞よりも、郁のほうが恐慌をきたしている。座り込んでいる瑞の前で膝立ちになり、おろおろと両手を動かしている。真っ青だ。以前伊吹が目の前で怪我をしたとき、自分もこんな感じだったなと瑞は場違いなことを思う。

「救急箱持ってくる!待ってて!」

莉子が駆け出す。

「どうしよう、須丸くん…!」
「一之瀬、一回落ち着いて。大丈夫だから。ほら…」

と右腕を持ち上げようとして、ずきんと痛んで顔をしかめる。骨折はしていないにしても、打撲だろうか。それを見て、郁は青ざめてますます涙を零してしまう。

「ごめんね、ごめんなさい…!」
「なんで一之瀬が謝るの?なんともないって」
「でももし、頭の上に落ちてたら…」

死んでいたかもしれない。

「わ!」

そう続けた彼女は、突然両腕を瑞の首に回して抱き付いてきた。その身体がかわいそうなくらい震えていて、瑞は反射的に両腕で彼女の身体を抱きしめていた。柔らかくて、頼りない感じ。全力で抱き返したら折れてしまいそうな気がして、瑞は少しだけ腕の力を緩める。なんだかとても心地がよかった。

「…大丈夫だよ。ちゃんと生きてる」

郁の身体の震えが止まるまで、瑞は目を閉じてじっとしていた。じわじわと温かい体温が伝わってきて、痛いのを忘れて眠ってしまいそうになる。誰かにこんなにきつく抱きしめてもらったことなんて、いつ以来だろうか。