こころのこえ 探偵奇談13
どいつもこいつもかわいい後輩なのだ。みんながみんな願いを叶えるなんていうのは不可能だけれど、できれば傷ついてほしくないとは思っている。綺麗ごとで、偽善的かもしれない。いい先輩を演じたい自己満足なのかも。そう言うと、颯馬はそんなことはないと笑った。
「先輩は優しいんだ。他人の気持ちに寄り添える。だから、他の人の倍、傷つきやすいんだと思う。そういうあなただから、瑞くんも慕うんでしょ。俺もだけどねー」
褒められているのだろうか。いや、逆に後輩に気を遣われてしまっているのだろう。あまり気にするのはやめよう、伊吹はそう決めた。
「…あいつらって実際どうだと思う?」
尋ねてみる。颯馬の目に、瑞と郁はどんなふうに映っているのだろう。
「えー?瑞くんがもういまの関係に安心しきっててむかつく?」
「わかるわ!!実際に一之瀬が別のやつに夢中になってちょっと傷つけばいいのにとさえ思うわ!!」
「でしょ?郁ちゃんがいつもそばにいてニコニコしてくれてて、そのありがたさに全く気付かず当然だと思い込んでるのがまじでむかつく」
意気投合して一通り笑う。今頃瑞は盛大にクシャミをしているかもしれない。
「で、二人はいま何か調査中なんですか?」
「ああ、うん」
他言無用と言われたので、ポルターガイストについて調べている、とだけ言っておく。
「ふうん」
紙コップのコーヒーを一口飲んで、颯馬は考えるように天井を仰ぐ。
「ポルターガイストってあれでしょ?皿がびゅんびゅん跳んだり、突然家具がひっくり返ったりっていう」
「うん。幽霊ってそんなことまでできるんだなあ」
思えば中庭事件のときのアレも、ポルターガイストなのかも。重機がひっくり返るという人間には出来ないことをやってのけたのは、神様だったのだが。
「でも世界中のポルターガイストの中には、人間の仕業だったものがあるんですよね?」
なんだって?
「人間の仕業?」
「なんかね、本当に幽霊屋敷が原因なこともあるけど…。実際には、生きた人間の無意識っていう例も多いみたいですよ」
作品名:こころのこえ 探偵奇談13 作家名:ひなた眞白