小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

こころのこえ 探偵奇談13

INDEX|30ページ/53ページ|

次のページ前のページ
 


「病気だった。もう長くなかった。でも親もじいちゃんも俺には教えてくれなかった。ばあちゃんが言うなって、そう言ったんだって」

それは優しさなのだろうか。それとも、何か別の意図があったのだろうか。祖母がいなくなった今では、確かめようもないけれど。

「いなくなったとき、夢なんだと思った…現実じゃないんだって」

どんなに心を交わしたひとであっても、どんなにたくさんの思い出を築いたひとであっても、死は必ず訪れて、何もなかったかのように、そのひとのいない人生が始まる。今ではもう、切ない温かい思い出と、身にまとう祖母の香水の匂いだけがよりどころだ。瑞だって、この数分後に死んでしまう可能性はゼロじゃない。そういう世界を自分たちは生きている。生きているのは奇跡なのだ。

「それ以来、大事なひとはすぐそばに置いておかないと不安なんだ。じいちゃんまで、俺の知らないところでいなくなったら、耐えられないから…それで俺、こっちに…」

話しながら、もう怖くなる。祖父がいなくなるなんて、言葉にするもの恐ろしかった。

「…あ、」

口をつぐんだところで沈黙が下り、瑞は我に返る。こんなことを小さい子に話してどうするんだと、恥ずかしくなる。

「えっと、だから、うーんと、莉子ちゃんとパパとママが、一緒のおうちでまた仲良くできるように、俺頑張るから」
「…瑞、おばあちゃんに、会いたい?」

莉子がこちらに身体を向け静かに尋ねてくる。祖母の顔が浮かぶ。思い浮かぶその顔も、これから少しずつ忘れていくのだろうか。それを考えると、瑞は怖い。とても。

「うん…会いたい。話したいこと、いっぱいある。お別れお礼も言えなかったから。後悔ばっかりだ」

悲しかったね。そう呟いて、莉子が静かに視線を外した。

悲しかったね。たった一言。

その瞬間、ああ理解してもらえた、と不思議な気持ちになる。こんな小さな子でも、悲しみを共有することが出来る。瑞は何だか不思議と、救われたような気持ちになった。悲しかったね、とそれだけの言葉だったのに。

「お待たせ!あったかいの買ってきたよ」
「あ、郁ちゃんだ」
「ありがとう一之瀬」

郁がコーヒーやココアの缶を持って戻ってきた。座ってそれを飲むと、身体が少し温まった。聞けば郁は、忘れ物や着替えを取りに行くという理由で、母から莉子の家の鍵を預かってきたという。これからその家に向かうことになるのだ。ポルターガイストの起きる家へ。






.