こころのこえ 探偵奇談13
重なる感情
土曜日の午後。瑞と莉子を引き合わせる日。郁は部活から戻り、父の見舞いに行って戻ってきた莉子を迎えた。
「莉子ちゃん、おかえり」
「パパ、手術したんだって。足の。歩けるようになるから大丈夫って、ママ言ってた」
母の入れたココアを飲みながら、莉子は寂しそうに言う。この家に来て三日。莉子は母親と離れている寂しさに蝕まれ始めている。こんな小さな子が親と離れて暮らすというのは、想像以上の不安と寂しさがあるに違いない。郁や弟がいくら莉子を笑わせても、莉子の家族はあの両親だけなのだから。
「おばちゃん、おうちに忘れ物しちゃったから取ってきていい?」
莉子が言った。
「あら、おばちゃんが行って来てあげようか?着替えもまだ必要だし」
「おもちゃとか、持ってきていい?お着替えの場所もわかるから、大丈夫」
「あたし一緒に行くよ」
そう、と笑い、母は友代から預かっている鍵を郁に渡す。
「郁、頼むわね」
「うん」
これは都合がいい。母には絶対言えないけれど、調査のチャンスだ。郁はコートを着て、莉子の手を引いて歩き出す。
「ねえ莉子ちゃん」
「うん?」
「あたしの友だちに、おばけが見える子がいるの」
灰色の空の下を歩きながら、郁は莉子に話す。小さい子にわかるように、怖がらせないように注意を払いながら。
「あたしね、今までその子にいっぱい助けてもらったの。莉子ちゃんのことも助けてくれるかもしれない。会ってみる?」
莉子はきょとんとしていたが、郁の目を見つめてやがて静かに頷いた。
「郁ちゃんの友だちなら、会ってみたい…」
作品名:こころのこえ 探偵奇談13 作家名:ひなた眞白