こころのこえ 探偵奇談13
これまで伊吹が瑞と一緒に関わってきた件と同じように考えれば、怪奇現象だと思う。死者や、土地神的なものが関わっているのだろうか。
「どう思う、瑞は」
考え込んでいる瑞にパスを出してみる。彼は何か考え込んでいたようだが、伊吹の言葉に顔を上げた。
「俺、なんかその話聞いたことあるなあ…うん、知ってる…」
え、と伊吹と郁は一緒に瑞を見た。
「どこで聞いたの?」
「って言っても、映画だったと思うんだけど…えっとねえ、すごく似てるんだ」
海外のホラー映画の話らしい。古い、まだ伊吹らも生まれていない時代の。
「子どもの頃、友だちとビデオで観たんだ。その映画に出てる役者たちが、その後たくさん亡くなって話題になった映画だって。確か、主演のまだ小さい女の子まで」
なんだそれは。伊吹は急激に自分の周りの温度が下がったような錯覚を覚える。ホラー映画に出演して死ぬ?呪われているとでもいうのだろうか。
「…どんな話なの?」
すでに青ざめている郁が口を開く。
「どっかの家に、一家が引っ越してくるんだ。両親と、子ども達」
菊川家と同じだ。
「で、夜な夜なその家の幼い娘が、砂嵐になったテレビに向かって誰かと会話するようになる」
その様を想像し、伊吹はぞっとした。絵面がもう怖い。砂嵐のテレビの前で、一体誰と会話するというのだ。恐怖をかきたてる。
「家の中では不審なことが次々に起きる」
瑞が語ったその現象は、莉子の家で起きている現象に酷似していた。家の中で起きる様々な怪現象。家族を悩ますその現象は徐々にエスカレートしていくという。
作品名:こころのこえ 探偵奇談13 作家名:ひなた眞白