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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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こころのこえ 探偵奇談13

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「あの夜のこと、ありがとな」

周りで八つ橋をつまむ級友らに聞こえない声で、瑞が唐突に言った。

「え?」
「神隠しのときの。颯馬(そうま)に聞いたんだ、ずいぶん心配してくれてたって」
「ああ、うん…それで、何があったの?」

瑞は頭をかきながら笑った。

「ごめん、それが…あんまり思い出せないんだ」
「そう…」

へとへとになったことだけは覚えてるんだけど、と瑞は苦笑して続ける。

「でも、なんだろう、もう大丈夫。大丈夫に、なった」
「大丈夫って?」
「うん。抱えていたいろんなことが、軽くなったっていうか…やっと、許されたような感じがするんだ」

許された…。
そう呟く横顔は、穏やかだった。郁は颯馬の言葉を思い出す。瑞は特別な存在だと。彼を取り巻く不可思議な運命、それがもしかしたら、ほんのすこしだけ優しいものに変わったのだろうか。そう思えるような、静かで優しい表情だった。

「…もう、どこにも行かない?いきなりいなくなったり、しない?」

殆ど自分でも意識しないまま、そんな言葉が出た。不安だったのだ。あの夜、颯馬と一緒に夜の校舎を駆けまわり、消えた二人を探したとき。大好きな人と大切な先輩が、もしかしたらもう帰ってこないのかもしれない。あんな思いはもうしたくない。瑞がどんな存在でも、構わない。でも、神様に連れていかれてしまうようなことは、もう二度と嫌だ。

「うん、どこにも行かない。もう大丈夫」