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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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こころのこえ 探偵奇談13

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冬の三角



冬の足音が、木枯らしの中を近づいてくる11月。冷え冷えとした空気が肌を刺すようにして制服の隙間から入ってくる。

「おはよー」
「寒いね」
「来週雪らしいよ」
「ヤダーはやいよ今年」

生徒らの喧騒が校舎に響き渡っていた。一之瀬郁(いちのせいく)はその合間を縫って足早に教室に向かう。今日から瑞(みず)が復帰するのだ。

(会うの久しぶりだ…なんか落ち着かない。緊張する…)

郁はトイレに立ち寄り、髪形をチェックする。伸びた前髪を整え、瑞のことを考える。

瑞が消えた神隠し事件から二週間が経つ。すぐにでもあの夜のことを聞きたい郁だったが、瑞が地元の京都へ帰っており、長く欠席していたので叶わなかった。家の用事で仕方なかったのだが、二週間というのは郁にとって長かった。好きなひとに会えないというのは寂しいものなのだ。

「おっす須丸」
「久しぶりじゃん、おかえり〜」
「ただいま。これおみやげ」
「八つ橋あざーす!」

郁が教室に入ると、すでに瑞がいた。友人らと談笑している姿は、相変わらず郁をきゅんとさせる。長い手足、夏の終わりに切ってから、ずいぶん伸びたミルクティー色の髪。形のいい耳、首筋のきれいなライン。

(あー須丸くんだ。会いたかったなあ…)

しみじみ思う。会いたかった。
教室の入り口でしばらくその姿を噛みしめる。鞄を持つ手に力をこめ、彼のそばに近づいた。

「おはよう須丸くん、久しぶりだね」
「おはよう一之瀬。元気だった?」
「う、うん」

イチジクの香水が香る。甘い瑞の匂い。笑っている瑞の顔がまともに見られない。心臓がどきどきする。久しぶりで、今までどうやって接していたのか思い出せなくなる。