こころのこえ 探偵奇談13
「じゃあ、放課後に。ありがとね」
そう言って、郁は席へ戻っていった。ぼんやりとその後姿を見送る。少しずつ変わっていく彼女に、なぜか焦っているというか、不安な気分になる瑞だ。女の子というのは、そうなのだろうか。男はいつまでも幼くバカだけど、女子の中には驚くほど大人びた子もいる。
「どうしたの須丸、ぼんやりして」
瀬戸青葉(あおば)がやってきて隣の席に腰掛けた。バレー部の彼女は、ある事件を通じて親交を深めたマブダチのような関係だ。さっぱりとした彼女は今日もつまらなさそうに瑞を見ている。
「女子ってなんか大人っぽいよね。なんで?」
「女子が特別大人なわけじゃなくて、男子がガキでアホなだけでは?見なよ、あれ」
クラスメイトの男子が、ベランダで雪合戦をしている姿を、青葉が冷ややかに見つめため息をつく。彼らは全身雪にまみれ大笑いをしており、瑞もまたそこに加わりたいなどとうずうずしてしまうのだから、ガキでアホの一員なのだ。
女子とかって、昼休みとか何してるんだろう。野球やバスケやゲームに夢中な男子とは違う。
「まあ女子はあれだよ。恋すると途端に綺麗になるって言うからね」
青葉に言われ、瑞はすとんと腑に落ちた。
「ああ、そうか。大人っぽくなったんじゃなくて、綺麗になったのか…」
作品名:こころのこえ 探偵奇談13 作家名:ひなた眞白