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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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こころのこえ 探偵奇談13

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「…すみません、」

莉子、いい子にね。そう言い残し、友代は救急車に乗り込んで去った。サイレンが遠ざかって聞こえなくなるまで、郁は莉子と母とその場に立ち尽くしていた。

「莉子ちゃん、おばちゃんちにおいで」

ね、と母がそう言って莉子を抱き上げた。母にしがみつき、莉子は頷いたようだった。寒空の下、三人で家に向かう。玄関では父が心配そうに佇んでいた。母は事情を説明しようとし、莉子に配慮してか郁に目配せを送る。それに頷き、郁は莉子の手を握って自分の部屋へ誘った。

「今日はお姉ちゃんと寝よ?」
「うん…」

莉子が不安にならないように、部屋の電気をつけたままベッドに入る。寒くないようにしっかり毛布をかけてトントンしてやると、青ざめた顔のまま莉子が郁を呼んだ。

「郁ちゃん…」
「なに?」
「あたしのおうちね、怖いの」
「え?」

囁くような声が、震えていた。

「お皿が跳んだり、お人形が動いたりするの…パパもきっと、おばけのせいで…」

母が言っていた怪現象のことだ。莉子もまた、その恐怖にさらされているのか…。

「パパが死んだら、どうしよう…どうしよう…郁ちゃん…あんな家嫌い…まえのおうちに帰りたい…」

声をあげずに、噛み殺すようにして莉子が泣く。小さな子が震えて泣く姿は、見るに堪えないくらいつらい。

「大丈夫だよ。ちゃんとパパ帰ってくるから。大丈夫…」

莉子の身体を優しくトントンする。しばらく鼻をすする音がしていたが、やがて静かになった。眠ったようだ。母親と離れ、不安で仕方ないだろうに。大きな声で泣いて母を呼ぶこともなく、じっと堪えている。そんな姿が、見ていて痛々しかった。