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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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こころのこえ 探偵奇談13

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眠っていた郁は目を覚ました。なんだか騒がしい。人々のさざめくような声と、サイレン…。

「なに…?救急車…?」

サイレンの音が近づいてくる。そして家の近所で止まった。
うちの近くだ。何かあったのだろうか。郁はベッドから這い出て窓のカーテンをめくる。闇夜に赤い光が明滅し、近所の人たちがざわざわと集まっている様子が伺えた。雪がうっすらと積もっている。
郁はカーディガンを羽織ると階段を下りた。両親も目覚めていたようで、リビングに灯りがついていた。

「菊川さんとこらしい」

父が言う。夕方の母の話が蘇った。妙な現象に悩まされ、引っ越しを考えているという一家。そこに救急車?嫌な予感がする。

「嘘でしょう…様子を見てくるわ」

母がコートを着て飛び出していくので、郁もあとを追った。薄い雪の上を踏むごとに、寒さがじんわりしみてくるようだ。妙に明るい灰色の空。雪がちらちら舞い始めた。
近所の人たちが心配そうに玄関先に出てきている。母が救急車のそばにいくと、それに気づいた友代がパジャマ姿ですがりついてきた。

「ああ、どうしよう一之瀬さん、主人が階段から落ちて…もうどうしていいか…」
「落ち着いて」

動転する友代の背をさする母。郁は友代のそばに小さい少女がいることに気づいた。
パジャマ姿の莉子が立ち尽くしている。救急車の赤い光に照らされたその顔は、恐怖と不安で青ざめていた。母親がパニックを起こしているのを目の当たりにし、ショックを受けているように見えた。

「莉子ちゃん」

郁は思わず駆け寄って、莉子の肩を抱いた。冷たく、小刻みに震えていた。

「病院に搬送します。娘さんも乗られますか?」

救急隊員に問われても、友代は半分取り乱したままだ。

「あの、わたし、ええと、」
「莉子ちゃんはうちでお預かりします。友代さん行って」
「でも、一之瀬さん…」
「大丈夫だから。何か必要なものがあればあとから電話して。とにかくいまはご主人のそばにいなさい」

母がバンと背中を叩いたことで、友代はようやく我に返ったようだった。