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詩集 あなたは私の宝物【紡ぎ詩Ⅵ】

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こころが からだが息を吹き返す

さあ 新しい一日の始まりだ


☆「菜の花の黄色、秋桜のピンク色~私のささやかな疑問~」

菜の花 向日葵の黄色
誰が決めたんだろう
どうして黄色になったのか
ある朝 ふっと疑問に思った
早いもので今日から10月
10月生まれの自分の誕生花でもある秋桜(コスモス)の花は
可愛らしいピンク色だけれど
何故ピンクなんだろう


考え始めると 世の中には不思議がたくさんある
私たちは「当たり前」を当たり前だと信じ込んで
「何故」「どうして」と考えることはあまりない
もっと考えてゆけば
もしかしたら 菜の花がピンク色になりたくて
コスモスが黄色になりたいと考えているかもしれない
ーなんて想像したこともない
だけど
たくさんの「当たり前」の中のほんの一つでも
ーどうしてなんだろう。
ちょっとだけ首を傾げたその瞬間から
自分の周囲の世界が今までの何倍にもひろがり
色彩のなかった風景が鮮やかな色をまとい
キラキラ輝き出すかもしれない

もちろん この世界には応えの判らないことばかりで
例えば 花の色もしかり
考えても意味のないことだと切り捨てれば話は終わり
それでも今日
今まで考えてもみなかったことに気づいて良かったと思う
多分 明日 道端に咲くコスモスを見たら
何気なく見過ごしていたあの可憐なピンク色が
よりいっそう際立って見えるだろうから

☆ 「紅葉が泣いている~古都の秋に想ふ~」


赤児の手のひらのようなもみじが
宙(くう)を舞っている
はらはら はらはら
音もなく静かに土に降り積もる小さな葉たちは
鮮やかに色づき 永久(とこしえ)の眠りにつく


いつだったか
もみじが真っ赤に紅葉するのは
血の涙を流しているからだと聞いたことがある
調べてみたら 本当に血液型があるとか何とか
嘘か本当かは知れない
まだ大学に通うためにに京都にいた時代
誰かが話していた
その話を聞いて数日後
清水寺まで出掛けた


折しも季節は紅葉(こうよう)たけなわの季節
色づいたもみじの葉が空も見えないほどびっしりと重なり合い
涯(はて)のない秋の蒼穹に映えていた
壮絶なまでの美しさに
一瞬 心がふるえた



        ー紅葉(もみじ)が泣いている
        ひそやかな秋の大気に耳を澄ませば
         紅葉の慟哭が確かに聞こえる
         血の涙を流してまで
         紅葉よ
         あなたは何故そんなに哀しげに身を揉んで泣くのか
         何があなたをそこまで哀しませるのかー



その日は観光シーズン真っただ中の秋の盛りで
あまたの観光客で広い御寺の境内はごった返していた
もみじの慟哭を聞いたひと刹那
周りの騒音はふつりとかき消え
私はただ彼女たちの泣き声だけを聞いた



ぼんやりと立ち尽くしていた私の肩に
通りすがりの誰かがぶつかっていった
謝ろうと慌てて振り返っても
カメラを担いだ中年男性はとっくに遠ざかっていた
図らずも 止まっていた周囲の刻(とき)が再びゆっくりと動き出す
何故か その日は境内をあちこち見て回る気にもなれず
入り口のもみじを見たきりで引き返した
御寺から続く三年坂と呼ばれる長い坂道を辿りながら
考え込む
「彼女」らの嘆きの理由は何なのだろう


古都で過ごした想い出多き青春時代は遠く過ぎ去り
あれから気の遠くなるような幾年月を重ねた今でも
応えは見つかっていない
我が家の庭のもみじは今
かつてないほど美しく染め上がっている
はらはら はらはら
今日も 小さな葉たちが宙を舞う
ただ ひととき燃えるような情熱の色に我が身を染め
潔く散ってゆくもみじ
己れの運命(さだめ)の儚さに自ら涙しているのか
はらはら はらり
ひとひらの色づいた葉が眼の前をよぎって
地面に舞い降りた

☆「今日、百合の花咲く〜父へ〜」

 今日 父に供えた百合の花が咲いた
 先月 秋たけなわのある日
 父の祥月命日を迎えた
 墓参もできず せめてもと
 位牌前に供えたのは
 炊き立てご飯のお握りと 
 夫に頼んで買ってきて貰った花束
 早速 花器に水を入れて飾ったときは
 まだ 百合の蕾は固く閉じており
 ーこれだけ固いのに、ちゃんと咲くのだろうか。
 少し気掛かりだった
 
 あれから一週間ほど
 今朝 本堂に行ってみたら
 あの百合の花が咲いていた
 いつの間に開いたのか
 まさしく大輪と呼ぶにふさわしい豪華な花が
 凛として
 誇らしげに 
 こうべをもたげて私を見つめている
 まるで生命の躍動と輝きを全身で表現しているかのように
 花は鮮やかな太陽の色に染まっている

 お父さん
 見ていますか
 あんなに固く閉じていた百合の蕾が
 こんなにも見事に開きました 

 父の位牌を撫でながら
 語りかける
 物言わぬ父の位牌が
 予期せぬ形で
 生命の逞しさ 煌めきを
 教えてくれたようにも思えた

 父と一緒に
 咲き誇る百合の花を愛でているような気持ちになり
 しばらく立ち去りがたい想いで
 位牌と花を眺めていた
 位牌堂の大きなガラス窓を通して
 穏やかな晩秋の日差しが降り注ぐ
 いつも笑顔を絶やさなかった優しい父のように
 透き通った陽のひかりの向こうに
 父の笑顔が見えた

☆「自分を一言で表すと~私が人生で最も大切にしたいもの~」

 自分を一言で表すとしたら
 どんな言葉がふさわしいだろう
 例えば 一字だけで表現するとしたらー
 ふと 考えてみた
 よくも悪くも自分は極めて平々凡々な人間だと思っているから
 「凡」だろうか 
 ー 一生に一度の大作を描きたいと常に夢見ているから
 「夢」かもしれない
 ー自分はいかに生きるべきなのか?
 結構 深刻に考えることも多いので
 「哲」の字だろうか
 或いは 次々と枝分かれしてゆく人生という長い道で
 ー次はどちらに進めば良いのか?
 迷っているから
 「迷」かもしれない

 などなど
 色んな一字が頭をよぎっていった
 結局 どの字も当てはまりすぎて
 ーコレだ!
 究極の一字を決められそうにない
 やはり 「迷」が一番ふさわしいのだろうか
 苦笑するしかない

 ただし 自分を表すのではなく憧れー人生の指針を示す一文字なら
 迷いなく胸を張って言える
 「真」
 この字は「誠」にも通じる意味合いを持つ
 どんなときでも どんな人にも
 真摯に向き合いたい
 ひたすら誠実に生きてゆきたい
 取り立てて大きなことを成し遂げられないとしても
 ただ誠実に生きる人生をまっとうできたなら
 それが一番の幸せであり 収穫だと思っている


 「凡」「夢」「哲」「迷」
 どの自分だとしても構いはしない
 ただ「真」という一文字を心に刻んで前を向いて進もう

☆「過ぎゆく刻の狭間で」

薄紙を一枚ずつ
ゆっくりと剥がすように過ぎゆく日々
そんな人生という道程(みち)の途中で
ふと立ち止まったとき
何げなく流れゆく一日一日が
とても愛おしく かけがえのないものに思える

セピア色に染まった全景の中で
そこだけ鮮やかに色づいた珊瑚樹の艶やかな実