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詩集 あなたは私の宝物【紡ぎ詩Ⅵ】

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すっくと背筋を伸ばして
たおやかに
でも凛として咲く蒼い花のように
揺るぎなく
気高く
謙虚でありながらも
したたかに生きてゆけたなら最高だ

初めまして 新しい私
明日からはまた生まれ変わった心持ちで
前向きに歩こう
新しい髪飾りをつけて
心に枯れない蒼い花を抱いて 

クリスマスソングの聞こえる12月の街
再び雑踏に紛れ込む
私を待つ大切な人が待つ我が家に帰るために


☆「明日を思い描いて」

とどまることのない感染症蔓延
そろそろチラリと頭をよぎる老後のこと
少しずつ無理がきかなくなる身体
鏡に映る自分の顔  

ガッカリの原因を数え上げたらキリがない


ー最近 ため息の数が増えてない?
自分に問いかける
そうだね
ちょっとマイナス志向になりかけているかもしれない
でも ちょっと待って
ため息の数って
ため息の数って
自分で減らせることもできるのを知っていた?
どれどれ
そんな魔法のようなことができるのかしら

それは意外に簡単
今という瞬間に感謝して
今の自分にできる精一杯のことをするだけ
それだけで
自分の周囲がガラリと変わって見えてくるから
騙されたと思って
一度だけ試してみると良い

考えてみて
例えば10年前の貴女はどうだった?
その頃、「今」に感謝していただろうか
満足できていたか
きっと 10年前も
ーあれが駄目 これが嫌。
ため息の数を自分で増やしていたはず
確かに
ずっと時間を遡ってみても
それじゃ20年前は満足していたかといえば
多分そうじゃなくて
ー何で自分はこうなんだろう。
否定的なことを探していたような気がする

ーこれはアナタ、大いなる時間の無駄遣いでしかないのだよ。
もう一人の自分がある日突然 叫び始めた
人はどんどん歳を取る
嘆くばかり不満ばかりの時間の過ごし方に何の意味があるのか
考え方見方をちょっと変えただけで
貴女の「今」も未来も信じられないくらい変わるのに
きっと今のままだと
また10年先の貴女は
ーどうして こんな時間の過ごし方をしたんだろう。
後悔するに決まっている

視線を少しだけ動かしてごらん
庭の白木蓮は小さな稚いつぼみを少しずつ膨らませ
空も寒走った真冬の薄青さから
おだやな空色に変わりつつある
いつでも 誠実な考えと優しい思いやりを持ち
穏やかな気持ちで過ごせれば
それが一番の幸せであり
また幸せに過ごせる方法だと
つい最近教えくれたのは一冊の本だった

ありがとう
気づけなかった大切なことに気づけて
一つ感謝が増えた分
ため息をつく回数が減った
優しいこころで誰かを想うように
明日を思い描いてみる
よく晴れ上がった青空に
白い雲色のクレヨンで大きく書いた言葉は
ー今が幸せー

☆「クリスタル・ムーン~Crystal Moon~」
透明度の高い夜空に
銀色の満月が浮かぶ
音もない静謐な冬の大気を通して
シャラシャラと
月光が光の粒となり
地上に降り注ぐ音さえ聞こえてくるよう

今宵の満月はウルフムーンと呼ぶらしいが
私の眼には
どこまでも透き通る水晶細工のように映る
シャラシャラ
シャラシャラ
耳をすませば
涼やかな音色が心に染み込んでくる
満ち欠けを繰り返す月の営みは
どこか人の一生にも似て
厳かでもあり 儚く哀しく
また愛おしいものでもある
月が完璧に満ちた日は手放しの夜
降り積もる様々な感情を解き放てば
また まっさらな心に戻って
明日からの一日を始められるような気がして

今宵は満月
月が満ちる時
紺碧の夜空にかかるは金泥の月
ひそやかに
秘めやかに息づき
地上のすべてを照らす
シャラシャラ
シャラシャラ
光のシャワーを浴びて
宵闇の底に沈み込んだ薄紅の寒椿が
清楚に 艶やかに浮かび上がる
ふいに鋭い羽音が夜陰のしじまを震わせた
かすかに揺れる椿の濃緑の葉
はらり 
闇に舞うひとひらの花びら
何かの鳥の仕業だろうか
偶然がもたらした物語めいた一幕
吹き抜けの廊下に佇む私の吐息が
白く細く消えてゆく

ー今夜
あなたは何を手放しますか?

☆「再~花と出会う季節~」

今年もまた彼女に会える季節がやつてきた
ずっとずっと待ち侘びていた瞬間
数日前 そろそろ会えそうだと便りをもらい
わくわくしながら迎えた この瞬間
私が約束の場所に心弾ませて行くと
彼女は相変わらず同じ場所にいた
一年中 彼女はここにいるのに
私たちが会えるのは365日の中のほんの数日だけ
そのわずかなあいだ
私は毎日 彼女に会いにいく
ーずっと この日を待っていたよ。
ー私もあなたにまた会うのを楽しみにしてたのよ。
彼女の声無き声が聞こえてきそうで
私はそっと耳を澄ませてみる

ふいに眼前を翡翠色の小鳥がよぎり
私は長い物思いから自分を解き放つ
すぐ前には 漸く咲き始めたばかりの白木蓮
今年も大好きな「彼女」に会える季節の到来だ
小さな鳥が白木蓮の枝先で羽を休ませている
ほころんだばかりの花びらはみずみずしく
鳥には恰好のごちそうらしい
小鳥は嬉しげに柔らかな花びらを啄んでいる
優しい彼女は花びらを齧られる痛みも堪えて
笑顔で花のついた枝先を揺らしている 
まるで
若いお母さんが嬰児(みどりご)をあやすように
私が一歩踏み出すと
小鳥は驚いたように翼にひろげ大空に羽ばたいていった

一年ぶりの再会を迎えた今日
私は何か特別な気持ちで彼女の前に立つ
ーようこそ、おかえりなさい。
数十年来の友人を出迎えるように白木蓮に微笑みかけた
春三月
早春の澄んだ日差しが透き通った花びらに降り注いでいる
顔を近づけた私の鼻先で
彼女から漂う甘い香りがかすかに香った

☆  「夫婦」
 バスが停車し、数人の乗客が乗り込んできた。バスセンターを出発して幾つめかの停留所での出来事である。
 バス内には十人ほどが既に乗っていた。三月上旬、日ごとに温かさを増す春の気配に、どの人の表情も心なしか和やかに見える。柔らかな雰囲気の中、突然の金切り声は異様に響き渡った。
「あんた、さっさと来られえ」
 七十代後半から八十歳くらいの老婦人とやはり同年代のご主人らしい老人が通路を隔てた私の横の席に座った。どうやら、奥さんがご主人を叱り飛ばしているようだ。
「もっと向こうに行ってくれんかな。邪魔になるんじゃわぁ」
 聞いてはおられないような、きつい口調が続く。つい、横をチラ見してしまった。私だけではなく、最前列の中年女性、私のすぐ前の若い男性も一様にちらちらと老夫婦を振り返っている。
「何遍言うても判らんのじゃなあ、荷物が邪魔じゃと言うとるじゃろう!」
 ついに奥さんはぶち切れ、更に大声でご主人を怒鳴りつけた。やはり、他の人は気になって仕方ないように背後を振り返っている。
 その罵声を最後に、漸く奥さんは静かになった。バスの中は元通りの静けさを取り戻し、老夫婦は十分ほど走った先のバス停でまた降りていった。通路側に座った奥さんがまず立ち上がり、ご主人を先に行かせている。
「あんた、先に行かれえ」
 今度は、もたもたしているとご主人を叱り飛ばすのだろうか。私は叱られっ放しのご主人を気の毒に思った。ところが、である。奥さんは、心配そうな声でご主人に言っている。