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コンビニでは買えない栄養素(小さな恋の物語)

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 そう思うのだが、美由は美由なりによくよく考えてのこと、自分のためを思ってのことだという事は胸にしみた……。


 一人で帰ったアパートは何だかガランとしていた。
 以前だっていつもそこに美由がいたと言うわけではない、しかし、この部屋には美由がいるべき場所があった、それなのに今はその場所ががらんどうのように見えて、美由がもうここには来ないことを思い知らされるようだ。
 美由のことは歳の離れた妹のように思っていた……はずだった。
 しかし、いつしかそれ以上の存在になっていたようだ。
 妹でないなら恋人?……いや、それとも違う……。
 自分が美由の寂しさを埋める存在である事は良くわかっていた、でも、美由も明男の癒しになってくれていたのだ、生きて行く上でお互いに必要な存在、大切な存在だった……。

 美由がいてくれるからこのアパートが自分の帰るべき場所、居るべき場所だったのに……居なくなってしまったとわかった今、この部屋は自分の居場所でもなくなってしまった、そんな気がした……。


 このアパートを借りた時は家賃が払いきれるか心配だった、しかし、今では役者としてのポジションは固まりつつある、もっと都心に近い、もっと立派なマンションを借りることも出来る。
 しかし、ここを引き払ったらもう二度と美由と会えない気がする、いるべき場所がなくなったら、もし、また美由が寂しい思いをした時に可哀想だ……だから引っ越すわけには行かない、たとえぽっかりと穴が開いたように思えても……。